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金曜日の夜に侑士の家族が謙也の家に来た。夏休みに会うた以来の侑士のお父さんもお母さんも相変わらずやったし、楽しかった。

お姉ちゃんの恵里奈ちゃんと喋ったりした。侑士の話も聞いた。「侑ちゃんほんまに名ちゃんのこと好きみたいやで。電話してるときめっちゃ幸せそうやもん」とか。そんなこと言われたら余計会いたなるやん。

まああとは別にニュースがある訳でもなく、終業式が終わり、クリスマスも過ぎた。侑士からは29日にそっち帰るわ、とシンプルなメールだけやった。でも確実に侑士に会える。それだけでプレゼントやった。

「謙也」
「なんや」
「何時に侑士来るん」
「昼ごろちゃうか?」

落ち着かない。どうしよう。何しとこう。

部屋は片付けた。綺麗好きの侑士のために。学校の宿題もやったし、年末年始は塾もないから宿題がない。服もこの間買ったやつ。友達に選んでもらったかわいいふわふわのスカート。

暇。やることがない。

「謙也〜ゲームしとこ」
「おっしゃ!何する?」
「やっぱりWiiのマリカやろ。家からハンドル持ってくるわ」

まだ朝九時。昼ごろやったらまだまだ時間がある。

「名何にするん」
「ヨッシー」
「じゃあ俺キノピオ」
「うわっなんでそんなスタートダッシュ速いん!」
「よっしゃー独走やで!」


「なんでそんな強いん…あたし友達とやって負けたことないんやで…」
「浪速のスピードスターの方が上やったっちゅー話や」
「もう一回」

得意げな謙也が腹立たしくて何回も何回もやった。それでも勝たれへんくて、謙也の部屋があったかくて、なんかそのうちふわふわしてきた。





「名、久しぶりやな」
「ゆ、侑士?え、いつの間におったん」
「何言うてるん?ずっとここにおったやん」
「ずっと…?」
「どこにも行かへん。俺はずっと名のそばにおる」
「え、でも、氷帝に帰らなあかんのやろ」
「何でやねん。俺は四天宝寺に通てるやろ」
「?」
「まあそんなんどうでもええ。な、名、こっちおいで」

侑士はそう言ってあたしをぎゅっとしてくれた。あったかくて、幸せ。あたしがずっと欲しかったものや。ふわふわした感覚。まるで現実味がない。



そら現実味ないわ。だってこれは夢。現実のあたしは謙也とマリカやってるときに寝てしもたんや。

謙也はいてない。Wiiも片づいてる。あたしは、どれだけ寝てしもたんや。

窓の外は、真っ暗やった。




夢の中ではしあわせ







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