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財前くんと調理実習の説明

野菜炒めの材料ですが、今回はキャベツとニンジンとピーマン、あと豚肉を使います。


家庭科の授業はどうしても眠なるけど、次の授業が調理実習なんやったらそんなんやるしかないやん。
普段は子守歌にしか聞こえない声も、やる気を出させる起爆剤になった。
(でも野菜炒めか…どうせやったらクッキーとかの方がかわいいのに)
にんじん、キャベツ、とプリントに書き込んでいく。
「どうせやったらぜんざい作りたない?」
後ろからぼそっと呟かれた。財前くんの方を見る。飄々とした彼の表情。今なんて言うた?ぜんざい?
「ぜんざいて。絶対難しいで…」
「そんなことないやろ」
「てゆうか財前くんそんなにぜんざい好きなん?」
「おん」
「財前くんかぜんざい好きってややこしいなあ。ぜんざいくんって呼んでいい?」
小さく笑ってもぜんざい好きな財前くんの顔が変わることはない。
「ぜんざいうまいんやで」
「知ってるよ。おもち入れたらおいしいよなあ」
「寒いとこであっついぜんざいとか」
「うわそれめっちゃええやん!今日とか食べたらおいしいんやろなあ」
「行く?今日」
「え?」
「せやから、今日、ぜんざい食べに行こや」
「えええ、部活は?」
「今日はフリー」
「ええん?」
「ええよ」
「じゃあ、行こっかな…」
「よっしゃ。俺のおすすめのぜんざいいっぱい食わしたる」
「太るわ!」
「姓さんと財前くん、今回ぜんざいは作りませんよー」
ちょっと恥ずかしい。財前くんのせいやねんで。当の本人は飄々としている。
前を向いた。プリントに書かなあかんことがたまってる、のに、財前くんがあたしの肩をつついた。
「いけるよ、姓さん細いし」
「いやいや、そうゆうこととちゃうて。絶対あたし今日でぜんざい嫌いになる自信がある」
「ぜんざい嫌いになるってことは俺のことも嫌いになるってことやでなあ」
「いやいやいやそれは違うやろ」
「あーあ、俺結構姓さんのこと結構好きやったのになー」
「あ、あたしかて財前くんのこと好きやし!」
思わずイスから立ってしまった。クラス中の視線一人占め!やった!とかや、な、くて…!冷やかしの声が痛い。あとぜんざいくんもとい財前くんのことが好きな女の子の目線も。そんな状況におかれても財前くんはクールな表情を崩さない。
「姓さんだいたーん」
「……恥ずかし死にする…」
「まあそんな姓さんもかわいいって」
「もうなにも言わんといて…」
「まっしゃーないっすわ」
ちょっとだけ笑った財前くんはちょっとだけかわいかった。でもやっぱり今日のぜんざいは一杯だけにしようと思う。

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