text | ナノ
未知なるものには興味を惹かれてしまうのが人間というものでありまして、たとえば小学生の時は星。
あの煌めく星々、特に冬の澄み切った空がお気に入りでした。小さく幼いわたしは美しいその星を虫取り網で採ろうと躍起になったものです。
今、わたしは、わたしがいちばん気になるものを研究中なのであります。
「…何見つめてん自分」
「忍足に眼鏡をとってほしくて」
わたしの今いちばん気になるもの。それは忍足侑士の眼鏡の秘密なのです。
三年間ずっと同じクラスのわたしたち。付き合うことどは無いにしろ、つかず離れずの関係を保ってきました。ときには彼のファンである子たちからきつい言葉を浴びせられたり浴びせたり。
わたしたちは親友というちゃちな名前では表せないくらい親密です。が、恋人などという甘い関係ではありません。わたしは彼のことが好きです。恋愛として見ているのかはわたし自身にもわかりません。いえ、おそらく恋愛対象として彼を見ています。女の子をとっかえひっかえしている彼です。彼にとってわたしは男友達と同等なのでしょう。それでも構いません。彼がわたしの側にいるなら。
そんなわたしですが彼についてわからないことがあります。それは彼の眼鏡について。テニスをやるには多少邪魔になってしまうのではないでしょうか。(ならへんよ、と彼は言いますが)
聞いた話によると、彼の視力は眼鏡をかけるほどでは無いらしい。ならばあれは伊達眼鏡。どうして伊達眼鏡なんてかけているのでしょうか。
疑問に思ったわたしは、勇気を出して行動を起こしたのでした。
「嫌や」
「なんでよ。外してってば」
「外せるもんなら外してみぃ」
そう言う彼はわたしよりも二十センチほど背が高く、届きそうなところに手が伸びると、彼に軽く避けられてしまいます。ああ悔しい。ニヒルに微笑む彼が憎らしく思えてきます。
「自分ちっちゃいなぁ」
「うるさいっ忍足がちっさくなればいいの!」
「無理やって。わかっとるやろ?大人しく諦め、名ちゃん」
同い年とは思えない余裕と風格。彼にとってわたしはおもちゃでしかないのでしょうか。
「よしよししたる」
頭を押さえつけられるようにがしがしと撫でられます。忍足は満面の笑み。
嗚呼、未だわたしの手は星には届かないようです。
流星群を追う生活