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「すき、なの」
名ちゃんが言ったことばが頭にこびりついて離れない。誰もいない駅のホーム。冷静になれという方が無理だ。名ちゃんの手がゆっくりと俺の腕から離れていく。
「それ、ほんとに、言うとる?」
俺はいつの間にか名ちゃんの手を掴んでいた。
「…っ」
頬も耳も真っ赤にして、文字通り茹で蛸のような彼女は、小さく頷いた。その瞬間、俺の中でもやもやしていた何かが弾けて、気がつくと彼女を抱きしめていた。すっぽり収まってしまって、彼女の表情は見えない。名ちゃんの肩が耳につくくらいに上がっていて、行き場の無くなっていた腕が、俺の背中を遠慮がちに触った。思わず俺は彼女を抱きしめる力を強めた。
「に、にお、くん」
「ありがと」
「うぇ、あ、う、うん?」
「…ありがとう」

小さく呟かれた「すき」が、こんなにも強い力を持っているなんて。

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