My childish small first love.


私が六歳の頃だった。
母親が死んだ。

身寄りもない私は、身体を売ろうとしてた。幸か不幸か、母親の情事を見て、知識だけはあったから。

ニヤニヤといやらしく笑う男の前で、一枚ずつ服を脱ぐ。その手はカタカタと微かに震えていた。
突然、バンッと大きな音がして扉が開かれる。


「ふざけんなッ!」


バチンッ、大きな音が辺りに響く。
私が彼に殴られた音。

大粒の涙がボロボロと流れる。
誰にも殴られたことなんてなかったからかな、頭がチカチカする。


「なんで俺に相談しねえんだよッ!おまえ、自分がなにしようとしてたのかわかってんのか?!」
『シーザーこそなに、言ってるの…?結局、私と貴方は他人じゃない!私はッ!生きてくために、するしかないの!仕事の邪魔しないでッ!』


シーザーにはわからない。家族がいるシーザーには。父親がいて、母親がいて、弟たちもいるシーザー。それに比べて、私は一人だ。一人で、生きるために、


「おまえはッ!そんなのイヤだって言ってたじゃねえか!料理人になるんだろッ!」
『ッ、そんなの、そんなの、無理に決まってるじゃない、結局、私はあの母親から産まれたんだもん。私、』
「うるせぇよ」


シーザーに抱き締められる。
あたたかいぬくもり。ああ、そういえば昔はお母さんも私を抱き締めてくれた。
抱き締めて、くれたのよ。


『ふっ、うええんんん!!』
「このッ、スカタンが…!」
『ほんとはっ、やだ、やだよぉっ、だって、でも、しにたくないの、わた、し、っ、まだ、』

シーザーといっしょにいたいのっ、


たとえ、嫌われても、幼い私はシーザーと一緒にいたかった。離れたくなかった。

なんだ、私は幼い頃から貴方に恋してんたんだわ。

今さら気付くなんて。


「おいッ!おれぁ、てめぇの客だろうがッ!今さら逃げ出そうとしてんじゃねえよ!」
『ぅ、ああ、』
「マリアに手ェ出すんじゃねぇよ、くそジジイが。」
「あァ?!」


シーザーが私を庇うように立つ。
やだやだ、シーザーを殴らないで。
シーザーシーザー、


「いいっ…!いてぇ!離せ、離せや!」

「父さん…?」
『シーザーの、お父さん、』


そこにはドッシリと構えたシーザーのお父さんが、男の腕を捻っていた。


「わたしの息子と娘になにをする」
「ひっ…!」


その言葉に、私はまた泣いた。
一人だと思ってた私が恥ずかしくて、シーザーのお父さんが私を娘だと言ってくれたことが嬉しくて。

ぐちゃぐちゃな顔。


「帰るぞ。シーザー、マリア。」


優しい優しいその手を幼い私は取った。


 
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