そこにはある少年がいた。
少年は幸せだった。
大好きな村や母がいたこの生活に満足していた。
ある日、母が大きな氷の塊を家に持ってきた。
どこで手に入れたのかもわからない。
ただ、それは溶けずにそこにあった。
少年は不思議に思った。
なぜこの氷の塊は溶けないのか、と。
母はわからないと答えただけだった。
そのうち少年は氷の中になにかがあることに気がついた。
なにかがなんなのかはわからない。
ただ、なにかがある。
そんな時に声が聴こえた。
その声は幼く、声色の中には寂しさを含んでいた。
少年はその声といろいろなことを話した。
自分の母のこと、自分の好きなこと、そんなくだらない話を毎日していた。
そんな毎日を過ごしていると少年はふと、声の主に会いたくなった。
しかし、声は姿を表すことはせずにただただ会話しかできなかった。
そんな時に母が死んだ。大好きだった母が。
正確には魔女狩りによって殺された。
母は魔女などではなかった。
少年は母が殺されるところを見ていることしかできなかった自分の無力さから一人、泣いた。
いつも少年と声が話す場所、氷の塊の前で。
その時だった。
辺り一面が光りに包まれたのは。
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bkm