十一年過ごして来て、これほどの衝撃を受けたことはない。
いや、リリーが男だということに関してもなんだけど。


「ジェームズは女の子だろ?」
『……』


何故バレた。

これでも私は男のように振舞っているし、父様が魔法学校に許可を貰って、男として通うことを許されている。
パッと見、ましてや初めて会った人間が私が女だとわかるはずがない。
実際、シリウスとリーマスとピーターも気づかなかった。いや、リーマスならいつか気付くだろうけど、シリウスとピーターは絶対言わないと気付かないな。馬鹿だから。

まあ、ようは初対面の人間が気付くのはおかしいわけで。


『…なにを言ってるんだ?私は男だが。』
「…え?うっそ!こんなに可愛いのに?」
『っ、』
「あ、顔赤い。可愛い」


初めて言われたその言葉に、顔が真っ赤に染まる。さらに図星をついた男の言葉に耳まで赤く染まった。

ム カ つ く !
なにこの男!私より可愛い顔してるくせに!

深みがかかった長い赤毛を一つで縛ってるこの優男。緑色の瞳が私を射抜く。


『おまえ、っ!』
「君は、面白いね」

「リリー!おまえなにしているんだ!」
「ジェームズ!さっさと着替えねえとホグワーツに着いちまうぞ!」


彼の息が私にかかるところまで近付く。
でも瞬間、二つの声がしてハッと意識が戻った。


『ごめん!今行くよ!』
「ったく、さっさとしろよ?リーマスもピーターももうとっくに着替えてんだからよ。」
『ああ。』


逃げるように、彼に背を向ける。

彼が本物のリリーなら、本来の彼女通り真面目な性格のはず。誰にも言わず、私になにかを言ってから、教師に話すだろう。よって、放置しても大丈夫。

そう考えると、私はさっさとシリウスのもとへ走った。


「…?なんだ、知り合いでもいたのか?」
「いや、ふふっ、」
「気持ち悪いぞ、おまえ」
「失礼だな、セブルスは。」
「…ふん」

「それにしても、不思議な子だったな。」


私はジェームズ・ポッター。
運命の子の父親になるはずだった女。

運命から逃げられた、はずだったのに。

運命は私と彼女を逃がすことなどしないらしい。
雁字搦めに縛られた自分が見えた気がした。


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bkm
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