狂った歯車


あぁ!幸せ!

大好きな大好きなこの世界に来て、大嫌いな大嫌いなあの子が消えた。

こんな幸せなことがあっていいのでしょうか!

いいえ、これは当たり前なのです。
なぜか、それは私が神に愛された愛し子だからです!

願い事が叶って、私はこの世界に産まれた。これは、神様が私を愛しているからに他ならないでしょう?

小狼くんも、雪兎さんも桃矢さんも、この世界の男の人全員が私のもの!

いずれは、世界を渡ろう。
ツバサの世界に行くのもいい。

物語の主人公は私なんだもの。
思い通りに進むに決まっていますでしょう?
世界は私にひざまずき、人は私を愛し慈しむ。世界はすべて私のもの。

わたくしはクロウの愛し子。
すべてが思い通りにゆく。

魔力もあるわたくしに敵うものはいないのだから。



「傲慢な子ね。貴女の代わりとは思えないわ」


冷たい瞳で魔女は吐き捨てる。
傲慢な少女の考えを見透かして、くだらないモノでも見るかのように。


「ふふっ、私から居場所を奪った彼女ですもの。性格がよろしいはずがないでしょう?」


それに黒髪の少女が笑顔で答える。
見るものを癒す、そんな優しい微笑みで。

瞳の奥に微かに燃えるのは、侮蔑の色。


「貴女もいい性格してるわね」
「彼女のせいで、大勢の運命が狂ってしまいましたから。私もそうですけど、一番はさくらちゃんとあの子…」
「そうね…」


黒髪の少女が思い浮かべるは、必死で自分を保ってた痛々しいあの子の笑顔。

できることなら、守って差し上げたかった。
いいえ、今でもあの子が幸せになるよう守って差し上げたい。

そう願うのに、思いは届かない。


「さくらちゃんは、なんて?」
「ただ、あの子の幸せだけを願ってたわ」
「そう、ですか…」
「彼女は自分の躯を対価に、あの子たちを渡らせた。新しい躯が馴染むまで、彼女は目覚めない。貴女はどうする?」

「私も、さくらちゃんが目覚めるまで、眠りを」


私と彼女の愛しい子。
貴女が幸せになるまで、いいえ、幸せになってからも、私とさくらちゃんは貴女の側におりますわ。

ね、柚子ちゃん

(6/8)

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