ただただ彼女になりきろう


お父さんの書庫にあった古い本。
まるでそれが運命のように、わたしはその本を開く。

まるで、じゃない。きっとそれが運命。

でも、それでもいいの。
桜ちゃんのためなら、わたしはなんだってできるんだから。


「こにゃにゃちわー!」
『ほぇ?』


わたしは桜ちゃん。
桜ちゃんなんだから、桜ちゃんに成り切るのは当たり前でしょう?


「やーあんさん、よーワイを目覚めさせてくれたわーあんがとさん!」
『……電池、どこ?』
「ワイはこの本を守ってる《封印の獣》や!」


きっと桜ちゃんがわたしを見たら、この滑稽な姿にきっと笑うでしょう。
それでも、わたしは桜ちゃんのために物語の通り進めるの。そうだよね。

それが正解でしょう?

杖を取る。それが運命。
そしてわたしはカードキャプターさくらになる。

物語の歯車がギシギシ音を立てて動き出す。


「わたしは、柚子ちゃんに幸せになって欲しいんだよ…」


桜ちゃんの呟きはわたしには届かない。

(3/3)

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テーマ「人外ファンタジー」
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