ただただ彼女になりきろう お父さんの書庫にあった古い本。 まるでそれが運命のように、わたしはその本を開く。 まるで、じゃない。きっとそれが運命。 でも、それでもいいの。 桜ちゃんのためなら、わたしはなんだってできるんだから。 「こにゃにゃちわー!」 『ほぇ?』 わたしは桜ちゃん。 桜ちゃんなんだから、桜ちゃんに成り切るのは当たり前でしょう? 「やーあんさん、よーワイを目覚めさせてくれたわーあんがとさん!」 『……電池、どこ?』 「ワイはこの本を守ってる《封印の獣》や!」 きっと桜ちゃんがわたしを見たら、この滑稽な姿にきっと笑うでしょう。 それでも、わたしは桜ちゃんのために物語の通り進めるの。そうだよね。 それが正解でしょう? 杖を取る。それが運命。 そしてわたしはカードキャプターさくらになる。 物語の歯車がギシギシ音を立てて動き出す。 「わたしは、柚子ちゃんに幸せになって欲しいんだよ…」 桜ちゃんの呟きはわたしには届かない。 |