抜け出せない逃げ出せない ケロちゃんにまた怒られた。 子ども拾っただけなのになぁ。 『で、君の名前は?』 「…ふぇ…ぃ…たん……」 『あ、名前は言えるんだね。』 よしよし、とフェイタンの頭を撫でると、猫のように擦り寄ってくるフェイタンにふわりと微笑む。 『じゃ、今日からよろしくね?』 わたしの言葉に戸惑いながらもコクリと頷いたフェイタンと早くたくさんしゃべれるようになりたいなあ、って思った。 『わたしの名前はね、柚子。柚子だよ。あ、お姉ちゃんでもいいよ?あ、言葉は分かる?』 フェイを膝の上に乗せて、そう言いながら頷くフェイの頭を撫でる。 ちなみにシャルはクロロがお気に入りみたいで、ハイハイが出来るようになると、クロロの後を引っ付いて回ってる。クロロも満更でもないみたいだし、みんな仲良しで嬉しいなぁ。 「姐姐…?」 『!…中国語?』 「?」 首を傾げたフェイだけど、この子は確かにジェジェと言った。 前に、小狼くんに教わったことのある中国語。 『…ね、フェイ、』 「……?」 『その言葉はあんまり使っちゃダメだよ』 この世界では、珍しい人や弱い人は強い人に奪われる。 もしも、フェイがこの世界にはない中国語で話していると、強い人に気付かれたり、この言葉を必要としてる人に知られたら、まだ幼いフェイは奪われちゃう。 そんなのイヤ。 もう奪いたくない。奪われたくない。 ねえ、さくらちゃん。会いたいよ。 「不哭」 『う、ぁ、』 フェイから発せられる言葉は小狼くんを思い出す。 その発音が、彼がわたしに優しかった頃を思い出させて、そして絶望させる。 「お、おれは、知世のがっ、」 ねぇ、どうしてそんなに顔を赤く染めてるの? 小狼くん、小狼くんはさくらちゃんを好きにならなくちゃダメ、だよ、 『い、やぁ、』 「姐姐、?」 結局、わたしはいまだに過去のしがらみから逃げられない。 |