光と闇の守護 クロロSide 姉さんが、また子どもを拾って来た時、「またか…」と思った。 それはウボォーさんたちも同じだったみたいで、シャルを抱っこすると静かに、そこから逃げようとした。 が、遅かった。 「柚子、ちょぉ、そこに座れ。」 『はい……』 怒り心頭な兄さんから逃げることは叶わなかった。 部屋から出たら殺される。兄さんに殺される。 兄さんから出る殺気が、部屋中を占める。 この中で平然としてる人間なんて姉さんくらいだ。 シャルでさえ、嫌な殺気に泣きそうになってるのに。きっと、泣かないのは兄さんが恐いからだと思う。 一番可哀想なやつは、姉さんに抱っこされてる気絶してるやつだよな。気絶してるのに、冷や汗が止まってない。 「これはなんや?」 『子ども?』 「子ども?やないやろ!なあんで、またガキなんか拾ってきてるんや!」 『だって…』 「だってやない!」 強く兄さんに言われて、しゅーんとなる姉さんが可愛い。 で、そんな姉さんにギュッと抱き締められてる気絶してるやつムカつく。 「さっさともと会ったとこ返してき!」 『!それはいや!』 「こんなにガキ増やしてどうするんや!保育所でも営む気か!」 『保育園…それもいいかも…』 「なにいっとんねん!」 あ、これは兄さんが負けだ。 もう姉さんの空気になってる。 それに、姉さんって頑固なところあるから、兄さんが反対しても、絶対にあの子ども飼うな。 『ケロちゃんが、駄目って言うなら、ダークとライトにお願いする!』 「あ、ちょ、待ち、」 姉さんがリリースすると、ダークとライトが出てくる。 兄さんはすっごくイヤそうな顔をした。 「ケルベロスは柚子ちゃんの意見に逆らうのかえ?」 「ふふふ。ケルベロスは駄目ねぇ。柚子ちゃんの意見くらい簡単に叶えるのが、守護神ってものでしょう?」 最凶二人がご降臨した。 ウボォーさんとノブナガとフランクリンは勝負あったと思ったらしく、冷蔵庫から食べ物なんかを取り出して、四人の様子を傍観してる。 「ケルベロス?おぬし、自分の主が取られるのが嫌なんじゃろ。」 「んなっ!」 「まあ。図星なの?」 「そんなんや、」 「じゃあ、柚子ちゃんの願いくらいとっとと叶えんか。」 ニヤニヤといやらしく笑いながら、兄さんの頭をこずくダーク。 それをライトは姉さんの肩をちゃっかり抱きながら、フワフワと微笑んで二人を見る。 姉さんが、動いた。 『ケロちゃん…』 「柚子…、」 『お願い。』 首を傾げて、兄さんにお願いする姉さん。 それに何か言いたそうに、口をパクパクする兄さんだったけど、やがて諦めたようにため息を一つついた。 「ちゃんと、自分で世話しないとあかんで。」 『うん!』 この二人って、絶対俺たちのこと犬かなんかと勘違いしてると思う。 「ん……」 二人を見ながら、そんなことを思ってると、姉さんの腕の中にいた子どもがピクリと動いた。 『あ。目ぇ覚めた。』 「うわぁぁあ!!」 姉さんを見た瞬間、逃げようとする子供に、姉さんはにっこりと笑顔を作って言った。 『今日から、君はうちの子ね。』 のちに、子どもーーフィンクスは語る。 あの時の姉さんは、文句を言わせない何かがあったと。 |