魔女は力と砂に愛される


【魔女】として、仕事を終えた帰り道。
ケロちゃんはお留守番。
子供たちのお世話があったから。

その代わり、わたしの傍にはサンドとパワー。


「はぁはぁ…主様マジ可愛い!」
「サンド気持ち悪い!」
「お前みたいな男女には興味ねぇんだよ。引っ込んでろ。」
「はぁ?!死ね!」


二人とも仲悪くて、大変だけど。

パワーがサンドに殴りかかるけど、サンドは砂になってそれを避ける。

うーん…なんで、二人ともこんなに仲悪いんだろ…


『ね、二人とも、喧嘩やめよ?』
「あたしの柚子様が言うならしょうがないわ!やめたる!」


そう言ってパワーがわたしの身体を抱き締める。
パワーって、素直で可愛いなぁ。

そんなことを思っていると、眉を顰めたサンドが砂を撒き散らしながら、わたしに近付く。


『きゃぁっ、』
「ちょっ、あんたなにすんの!目に砂が入るやろ!」


その砂が目に入って、生理的な涙が零れる。それはパワーも同じだったらしく、大きな声でサンドに怒声を浴びせてた。


「涙目の俺の主様マジ可愛い!」
「あっ、ちょ、お前なにあたしのこと押し退けてあたしの柚子様に抱き着いてんねん!」
『えっと…、二人とも、苦しい…』


わたしをぎゅーぎゅーと競うように抱き締める二人に、そう呟く。
けど、二人はお互いに争ってて、わたしの言葉はとどかなかった。

…あれ?なんか切ない…


険悪な雰囲気のサンドとパワーをなんとか宥めながら歩いていると、一本のナイフがわたしたちに投げられた。


『わっ、』
「「あ"ぁ"?」」


危うくわたしに当たりそうになったナイフを、パワーが反射的に掴んで、へし折る。

そして、ナイフの飛んできた方を、思いっきり睨んだ。

…ど、どうしよう。二人の目が、凶悪っていうか、ヤクザっていうかだよ…


「あたしの柚子様にナイフぶん投げたアホはどこやぁ?あぁ?」
「はっはっは。俺の主様にんなことするたぁ、いい度胸じゃねぇか。殺す。」

「ひ…っ!」

「そこかァ!!」「ぶっ殺す!!」


二人の顔がよほど怖かったのか、物陰から悲鳴が聞こえた。
そこにいたのは、まだ小さな男の子。
サンドとパワーの瞳が殺人鬼の目になって、思いっきり殺気を飛ばす。


『だ、ダメだよ!まだ、子どもだよ!』
「あたしの柚子様が止めるなら、やめるわ。」
「俺も。」
『軽い…!』


ノリが軽い二人に呆れつつ、男の子の方へ向かう。男の子は、サンドとパワーの殺気に当てられたのか、気絶してしまっていた。

男の子の服装はボロボロでとても汚ない。

………拾ってもいいかな。


『パワー、サンド。この子持って帰ろ?』
「あたしの柚子様が言うなら、持って帰ろーや!あぁ!あたしの柚子様の上目遣い可愛いわー!」
「うるせぇ!ブス!主様は俺のなんだよ!カスが!それにしたって、ハァハァ、俺の主様萌え!」


……サンドとパワーの将来が思わず不安になった。

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