世界は弱い人に優しくない


「なんや、二人でおるの久しぶりやな。」
『ふふ、そうだね。』


となりで照れ臭そうに頬をかくケロちゃんに笑う。

今日は久しぶりにケロちゃんと二人きりで、お散歩。
子どもたちは、ウインディとフラワーとダッシュに任せてきちゃった。

たまには、二人だけでもいいよね。


「…やっぱ、柚子は笑顔が一番やな。」
『……そうかな。』
「当たり前やろ!もう、あんな柚子はみとうない…」


きっと、ケロちゃんが言ってるのは、わたしが飛び降りた時のこと。
それに、わたしは何も言えなくなる。

ごめんね、なんて言えない。
だってわたしは、あの時のわたしの決意を後悔してないから。

でも、一つだけ言えるのは、

『ねぇ、ケロちゃん。わたしは、今度はケロちゃんたちを置いていかないよ。ね?』
「……約束やで、」


もう、わたし一人でいなくなったりはしない。
ううん。一人ではいけない。
わたしはきっと、それくらいカードに依存してる。

そんなことを考えながら、二人で笑いながら歩いていると、ドスン、女の人にぶつかった。


「っ、」
『わっ、』
「お、怪我あらへんか?柚子。」


ぶつかったことで、後ろに倒れそうだったのをケロちゃんに支えられる。
それに、お礼を言ってから女の人を見る。

金髪がキラキラと輝いていてとても綺麗。


「ぁ、あ、」
『あの、大丈夫ですか?』
「だめ、だめなの、ぁぁ、あ」
「『?』」


女の人は狂ったように、挙動不審に、辺りを見る。
カチリ、エメラルドグリーンの瞳と目があった。


「あ、ぁ、お願い、貴方、この子を、」
『?』
「あ、柚子、人からなんでも受けとるんや、」
『赤ちゃん…?』


あっちゃー、とケロちゃんが頭を抑えてる横で、わたしは女の人に渡された赤ちゃんを見る。
金の髪にエメラルドグリーンの瞳、女の人と同じで、綺麗な赤ちゃんだった。


『わぁ…』
「この子、この子、シャルナークって言うの、お願い、この子を、」

「女ァ!!どこ行きやがった!!」

「!っ、早く行かなくちゃ、お願い、シャルを、シャルナークをっ、」


そう言って、逃げるように立ち去って行った女の人を、ポカンとケロちゃんとみつめる。


『…えっと、ケロちゃん…、』
「……なんでも受け取るんやない、ゆーとるやろ」
『だって…』
「…しゃーないから、ワイがあの女探してくるわ。」
『!ありがと!』


ポンッとわたしの頭に手を置いて、ケロちゃんが女の人を追いかけて行った。

赤ちゃん、もといシャルナークのほっぺをぷにゅぷにゅといじる。すると、ぎゅっと手を握られた。


「あーぶ、」
『…やっぱり、お母さんと一緒がいいよね。』
「あぅ?」


もう、顔も思い出せない柚子であった時の母親を思い出しながら、シャルナークに微笑んだ。


女の人を探しに行ったケロちゃんの顔が歪んでいたことから、あの女の人が亡くなっていたことを知る。



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