すべての始まりは


「どうか私を大道寺知世に成り代わらせてください!」


それが一番の原因。
傲慢な少女の傲慢なる願い。

それが皮肉にも叶えられてしまった。


「さくらちゃん、さくらちゃん…ごめんなさい…ごめんなさい…」
「知世ちゃん、」
「わたくしが、奪われてしまったから」
「泣かないで、知世ちゃん」


優しく優しく、涙をこぼしている黒髪の少女へ笑いかけるのは黒髪の少女の唯一無二の少女。
慰めあうように二人が寄り添う。
とても美しい光景。


「わたし、知世ちゃんといるよ」
「え…」
「知世ちゃんじゃない知世ちゃんなんて、わたしは友達になりたくないもん」
「さくらちゃん…」
「わたしの代わりはちゃんといるから」


にっこり微笑む。明るい笑顔。
でも、その少女が望むのは残酷なこと。
彼女の始まり。


「ねえ、知世ちゃん」
「なんですか、さくらちゃん」
「絶対、大丈夫だよね」
「はい。だって、あの子もさくらちゃんですから。」

「絶対、大丈夫だよ」


少女たちが望むのは、あの子の幸せ。
一人の傲慢な望みから産まれた一つの歪み。歪みは強い意志を持って彼女へと成り代わる。

儚くて、脆くて、それでも、強い意志を持って、彼女は少女になる。
それが少女のためになることを信じて。


「幸せに、なってね。」


少女の望みはただ幸せになってもらうことだった。

(8/8)

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テーマ「人外ファンタジー」
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