ただこの人を愛おしく想った クロロSide 流星街に捨てられた母親と父親の間で生まれた子ども。それが俺だった。 苦労をしながら、でも、それでも、幸せだった。両親に愛されていると、幼いながらに気付いていたから。 なのに。 マフィアンコミュニティのやつらに全てを奪われた。 父親も母親も、生きる気力も。 そんな俺を拾ってくれた【魔女】と【使い魔】 この二人はマフィアンコミュニティの間ではすごく有名だった。地下で虐待され続けていた俺にも噂がくるほどに。 無表情で躊躇いなく人を殺す子どもと、それに付き従うように人を殺す獣。そして、子どもを守るように笑い続ける人形のように美しい顔をした人間。 地下から出られない俺には関係ないと思っていた。 あの日までは。 あの日、俺が魔女に拾われた日。 突然現れた一人と一匹は、ついでだと言うように、俺を助けた。 どうせなら、死んでしまいたかったのに。 家族を殺された俺に、帰る場所はない。 その気持ちを見透かしたように、魔女は笑う。 『ごめんね。……殺さなくて。』 そう呟いた魔女の顔を見れば、微笑んでる魔女の瞳はゆらゆらと憎しみで揺れていた。 俺と、同じ瞳。 ゾクリとした。 まだガキの俺でも分かるくらいの壊れた笑みに。 でも、それと同時にこの人に着いていけば、俺は、全てを手に入れられる気がした。この世の全てを。奪われる側から奪う側へ。 ▽ 『ねぇ、クロロ。何か欲しいものはある?ケロちゃんが買いに行くって。』 「とくにないよ。」 優しく微笑みながら、そう聞く柚子姉さんに俺も笑う。 俺が姉さんに拾われて半年。 だんだんと、この人のことが分かってきた。この人は、定期的に死にたがる。 俺は一度しか見たことがないけど、兄さんが、姉さんが腕を切っているところを見て、止めていたことがある。 その腕に、しっかりと刻まれた切り傷を見たこともある。 柚子姉さん。 この人がすごく愛おしいと思う。 愛おしくて、愚かだと。 まあ、そんなことを言ったら兄さんに殺されるから言いはしないけど。 それでなくとも、兄さん、姉さんにはケロちゃんと呼ばれてる金髪の男は、姉さんに近付く人を皆殺しにしそうなほど、姉さんを溺愛している。 でも兄さんは兄さんでそれがなければ、俺に修行をつけてくれたりと、すごくいい人だ。 死にたい。 とは、思わなくなった。 |