世界に偶然なんてなく、全ては必然なのです


ギュッとタオルを絞ってベッドに横たわる少年の額に乗せる。額を見ると、十字架のような刺青。サラリと、少年のさらさらの髪を一つ撫でた。

それに何かが思い出せそうだったけど、やっぱり思い出せなかった。


「柚子、大丈夫か?昨日から寝てへんやろ。」
『ケロちゃん。大丈夫だよ?』
「わいはこいつより柚子の身体の方が心配や。」


そう言ってわたしの頭を撫でるケロちゃんに笑みを返す。

心配されるのが嬉しいなんておかしいのかな。でも、なんだかすごく嬉しい。


「…なーにニヤけとんねん。」
『そんなににやけてる…?』
「にやけとる。」
『いたっ、』


嬉しさがすごく顔に出てたらしい。
ちょっとだけムッとしたケロちゃんに額を小突かれてしまった。
それすらも、くすぐったい。

なんでもできる【さくら】じゃなくて、わたしとして扱ってくれる。
それがすごく幸せだと思った。


「ん…ぁ、」
『あ、目覚めた?』


ブツブツと心配性なケロちゃんにお説教されていると、男の子が唸り声を上げながら、目を覚ました。

目が覚めた少年をゆっくりと起き上がらせる。


『お水飲む?』


コクリと頷いた少年に、側にあったコップに入った水を渡す。

すると、すごい飲みっぷりを見せてくれました。ゴクリと喉を鳴らして、水を飲む彼に思わず拍手を贈りたい気持ちになる。


「……あの、貴方は…?」
「それより先にお礼がやろ。柚子はお前のこと寝ないで看病したんやぞ。」
「あ、ありがとうございました…」
『別にいいのに…』


もう一杯少年にお水をあげてから、ケロちゃんに笑いかける。

それからゆっくりと男の子の顔を見た。


『ねぇ、君の名前は?』
「……」
『言いたくないなら、言わなくてもいいよ。ごめんね。』

……殺さなくて

その言葉に少年は弾かれたようにわたしを見る。

少年とわたしの瞳が交わる。

わたしと同じ瞳。この世界に絶望して、恨んで、死にたくて、でも死ねなくて、

わたしとおーんなじ。


「なんで…、」
『それは秘密だよ。ねぇ、わたしたちとここに住まない?』
「はぁ?!何言うとんねん!」


ギャーギャーと後ろで騒ぐケロちゃんの言葉を聞かずに、ジッと少年だけを見つめる。

わたしと似ている男の子。
この子を見てれば、なんだか桜ちゃんに近付ける気がするから。


「……」
『…ありがとう。』


コクンと頷いた少年に、わたしは笑みを深めた。


これがわたしと、後の幻影旅団団長クロロ=ルシルフルの出会い。

(8/22)

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テーマ「人外ファンタジー」
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