杖を持たずに剣を持つ


念は自己流だけど完璧になった。

わたしの発は、カードの補強。
発の名前はそのまま。
【封印解除(レリーズ)】
だから、わたしはカードがないと生きていけない。

でも、それでもいいと思ったから。

だって、この子たちがわたしがいないと生きていけないのに、不公平だもん。
それに、カードは実体化できるようになった。

さくらでいるよりも、柚子でいられる世界はひどく心地がいい。


『ケロちゃん!』
「なんや?」
『今日の依頼は?』


わたしとケロちゃんは二人で、何でも屋みたいなものをやってる。
人を殺す時もあるけど、悲しいって気持ちが出て来ないわたしはどこかおかしいかもしれない。

でも、生きるためだもん。
桜ちゃんのためなら、なんだってやる。

ケロちゃんはあの日から、カードには戻れなくなってしまった。まあ、でも本人はあんまり気にしてないからいいのかもしれない。獣姿には戻れるし。


「マフィアの殲滅やな。今日はどないする?」
『じゃあ、ウッドとソードで行くね。』
「ほな、わいは戻ろうか。」


そう言って人間の姿からケルベロスの姿に戻るケロちゃん。


わたしの大切なものが、ここにはある。


だから、


「な、なんだ、このガキ!」
『依頼がありまして、あなた方を殺しにきました。【魔女】と呼ばれる者です』
「ほな、行こうか。」


この子たちと生きるためなら、人を殺すことも躊躇わない。


『【樹ーウッド】!』
「はいな。」


ウッドがその場にいるわたし達以外の人間を締め付ける。
その隙に、わたしはソードでウッドから逃げた人を次々と殺す。

すると、何人かの人間が地下に逃げ込んだ。


『逃げても無駄なのに。』
「柚子はあいつを追いかけぇや。」
『ケロちゃん、あとはよろしくね。』
「任せろや!」


ケロちゃんとウッドに上にいる人間を任せると、わたしは地下の階段をおりた。


『【灯ーグロウ】』


真っ暗だった地下をグロウで灯を灯す。ほんのりだけど、明るくなった地下に絶句。


『なに、これ…、』


血だらけの部屋。
小さな手が這ったような赤い手の跡。

…まさかまさかまさか。


「……主人?どうかしたのか?」
『この人たちは、人間のゴミ。【闘ーファイト】。こいつらを殴り殺して。』
「イエス、マスター。」


ソードの言葉にそう返すと、ファイトのカードをレリーズして、ファイトと一緒に男たちを殺して行く。地下にはたくさんの人が隠れていた。たくさんの血に服が、体が、赤く染まる。


「おい!こいつがどうなってもいいのか!」
『っ、卑怯…、』
「ははは!魔女も子どもには弱いんだな!」


男の手には憔悴しきってる男の子。男の子の瞳は、かつてのわたしに似ていて、


『……そう。』
「なにが、そう。だ!てめぇは今から死ぬ…グギャァァァァアア!!」
「マスターに近寄るな。」
『ファイトありがとう。……君、大丈夫?』


コクリ…と、力無く頷いてから、男の子はグッタリと倒れた。

ファイトに男の子をおぶってもらう。


『じゃあ、帰ろう。』


今のわたしたちの家に。

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