わたしのただ一人の救世主


なんでここにいるのか分からない。

けど、この世界に来てから三ヶ月。
わたしたちは、流星街でなんとか生きてる。それもこれも、カードとケロちゃんのおかげ。ただ、杖が使えないけど。

今日もまたケロちゃんにはお留守番をしてもらって、カードを持って流星街を探索していると、バンッと衝撃が来た。


「今日は俺が仕留めたぜっ!」
「ずりぃ!俺もヤりてぇ!」
「てめぇらは見てろ!」


わたしの身体から白い湯気のようなものが出る。
男が一人近付いて来てるのがわかった。
このままなら、わたしは男たちに犯されてしまう。

身体から力が抜けて、目を閉じた瞬間、声が聞こえた。


「絶対、大丈夫だよ。」
『え、?』


それはわたしが落ちる瞬間にも聞こえた声で、あの子の口癖。

聞こえた瞬間、白い湯気のようなものがわたしの体にまとわりつく。
身体が勝手に動く。


『星の力を秘めし鍵よ 真の姿を我の前に示せ 契約のもと、柚子が命じる』

封印解除!


パァア…!と光が辺りに満ちる。
杖が、さくらの名前じゃダメだった杖の封印が解除される。


《ねぇ、主様。一番最初は私ですか?》


カードから声が聞こえた。

そう。一番最初は決まってる。だって、物語の一番最初はこの子だったから。


『【風ーウインディ】!』


風がわたしを包む。
ウインディの楽しそうな笑顔に思わずわたしも笑顔になる。


『ウインディ、』
《お任せくださいまし。》


そう言ってウインディがグルンとわたしの周りを一周すると、男たちに風を飛ばす。男たちは、サッと顔を青くすると、何処かに立ち去ってしまった。


『ウインディありがとう。』
《ふふ…当たり前ですわ。主様。》


ウインディはわたしの額にキスをすると、カードに戻っていった。

あとに残されたのは、星の杖を持ったわたしだけ。


ポロリと涙が零れる。


『桜ちゃん…、』


屋上から飛び降りた時に聞こえた声と、さっきの声。どちらもきっと桜ちゃん。


桜ちゃんが、ここに来させたの?
桜ちゃんはわたしのこと怒ってないの?

わかんない。けど、きっとこの世界にいれば、桜ちゃんのことを知ることが出来る気がするの。


『ケロちゃん…』
「ん?どうしたんや?……って、それ杖か?レリーズできたんか?」


家に入ると、ケロちゃんがいる。
ここは、わたしの家。


『生きるね。わたし。』
「柚子…?」
『桜ちゃんのこと知るまで、わたし死ねない。』


そう。わたしが生きるのも死ぬのも、桜ちゃんのためで、桜ちゃんだけがわたしを縛らなくちゃいけないの。

だから、わたしは生きる。


この日から、この世界に“魔女”と“使い魔”の名前が広がる。

(6/22)

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -