わたしはただ静かに暮らしたいのに


『ケロちゃん。ここはどこ?』


いっぱいいっぱい泣いて落ち着いた頃。

男の人はやっぱりケロちゃんだった。
なんで人間になれたのか分からないけど、ケロちゃんはなれて嬉しそうだった。


「それがワイにもようわからんのや。」
『わたしは、死んだんじゃないの…?』
「っ、」


ずっとずっと聞きたかったこと。

わたしは確かにあの夜、屋上から飛び降りたのに。なんで生きてるんだろう。

そうわたしが聞くと、ケロちゃんの顔が歪む。


「頼むから、頼むから…もう、あんなことはせんといて…、」
『……』


懇願するケロちゃんになにも言えない。

だって、わたしにその約束が守れるかどうか分からないから。
わたしには死にたいって欲求があって、それがわたしをどうかしようとする。
だから、その言葉にわたしは簡単に頷けない。頷いちゃ、いけない。


『……とりあえず、ここがどこか調べよう。』


立ち上がろうとすると、クラッと目の前が一瞬真っ暗になって、尻餅をつく。

すると、手の先にはなにか固いもの。
手にとってみると、それは、


『カード…?』
「さくっ…、柚子が消えたと同時にそのカードも一緒に消えたんや。」
『そう…』


ギュッとカードを胸に抱き締める。

これからはカードたちと向き合わなくちゃいけない。木之本さくらじゃなくて、星宮柚子として。

もう、わたしはさくらじゃないから。
誰も知らないところで、わたしはわたしを生きるの。


『じゃあ、行こう。』
「そやな…」


どちらから言うまでもなく、自然と手を繋ぐとわたしとケロちゃんは、外に出た。もちろん、カードたちとも一緒に。


外に出た瞬間、悪臭が鼻につく。
思わず口と鼻を手で抑えるほどの悪臭。

本当に、ここはあの世界…?
それとも、違う世界なの…?


『……ここ、』
「柚子?!」


走って、走って、高台まで向かう。

見覚えがある。
昔、漫画で読んだことがある気がする。

確か、そこの名前は、

『流星街…』

わたしは、あの世界から今度はハンターハンターの世界に来てしまったらしい。

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