子どもの癇癪のようなものでした


なんでわたしをその名前で呼ぶの?

わたしは、柚子。
さくらじゃない。

ずっと、ずっとずっと。ずーっとわたしは、さくらをしたんだから。
もう、いいでしょ?ねぇ。わたしは、わたしに戻ってもいいでしょ?

だって、もともとわたしは、さくらじゃなかったんだから。


『さくらじゃない、わたしは、さくらなんかじゃない…、だって、わたしは、柚子だもん。柚子はわたしで、さくらは桜ちゃ、あ、ぁ、あ、あぁぁぁぁあああああ!!!!!』


叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ。

許しを請うように、哀しさを外に出すように、悲しくて、苦しくて、

死にたくて。

なんでわたしは死んでないんだろう。
わかんないよ、わかんない。


「っ、」
『桜ちゃん、桜ちゃん、』
「さ…っ、」


手を伸ばして、手を伸ばして、

どこにいるかもわからない桜ちゃんに、許して許してって呟く。


「柚子……、?」


ピクリ。
手を伸ばすのをやめて、そちらを見る。

そこには、金の髪をした綺麗な男の人。


『わたしの名前を呼んだ…?』
「っ、」


きょとんと、彼を見る。
わたしの名前を呼んでくれた人。

でも、彼はあの子に似てる。


『ケロちゃん、?』
「っ、」
『ケロちゃ、』


次の瞬間、わたしはケロちゃんに似た雰囲気を持つ彼に抱き締められた。


「……っ、くっ、」
『………?なんで、泣くの?』
「悪かった…、」
『なんで、謝るの、?』


ケロちゃんはなんにも悪くないのに。
全部わたしが悪いのに。

この時、わたしはすでに彼がケロちゃんなんだって思って疑わなかった。だってケロちゃんと同じ雰囲気なんだもん。優しい優しい、ひだまりのような雰囲気。

優しさも、あたたかさも、全部ケロちゃんと同じ。とても、落ち着く雰囲気。


「なぁ、ワイはずっと一緒におる。おるから、置いていかんで、」
『ケロちゃん……、』
「ワイらが守るから…」


泣きながらそう言うケロちゃんに、わたしも泣きながら黙って頷いた。



ずっとずっとずっと、わたしは桜ちゃんの代わりでしかないって思ってた。

けど、ケロちゃんにとったらわたしはさくらで。わたし以外の人は知らなくて。

わたしは、初めてケロちゃんたちに必要とされてるんだって、気付いたの。




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