もう一つの道標 「そう…来たのね…」 「は?なにがですか?」 一人の女性が呟いた途端、光が庭先に落ちる。 光の中には、同じ顔をした女の子が二人。一人はもう一人を護るように、抱き締めていた。 「?さくらちゃん…?」 「ちがうわ。」 「え、でも、顔が…」 青年が二人の女の子を交互に見る。つい最近見た異世界からの住人たちの中にいた女の子と同じ顔をした少女たち。 だが、それは同じであって、どれも違った存在。 「…やっぱり柚子ちゃん、壊れちゃった」 「この子は、貴方を大切にしていたから」 「わたしも柚子ちゃんが大切だよ。でも、わたしの代わりに、辛い目に合わせちゃった…」 そう言って、女の子は悲しそうに眉を下げていまだに意識を失ってる少女を見る。その様子を女性はただジッと見ていた。 「柚子ちゃん、頑張ってくれてたの。でも、あの子と小狼くんの話聞いちゃったみたいで…」 「それは、辛かったわね…」 「うん。すごく、痛かった。」 「……それで?貴方の望みは?」 突然女性の瞳が鋭くなる。女の子はそれに苦笑いすると、抱き締めている少女の髪を優しく撫でなから、決心したように女性の瞳を見つめ返す。 「…柚子ちゃんを、違う世界に。」 「対価は?」 「わたしの躯を。」 少女の瞳には並々ならぬ決心。 少女はただただ、抱き締めている少女のために必死だった。 自分のために、必死で自分を演じていてくれた女の子に。自分に全てを捧げようとしてくれた女の子に。 「……貴方の躯でその子を渡すのには、対価が大きすぎるわ。」 「この後もう一人、世界を渡ることを望む人が来るの。その人の分も入ってるから。それに、ケロちゃんたちも柚子ちゃんの側に。」 「……わかったわ。カードはその子の力で支配できるようにしとく。それに、具現化もできるわ。あとの使い方はその子次第よ。…それと、その子の躯はこれから成長しにくくなる。それが、その子自身が払う対価だと思いなさい」 「うん。ありがとう、侑子さん」 ふわり、微笑んだ彼女は優しく、強く、美しい心を持ったもう一人の少女。 少女が殺したと思ってるもう一人の自分。 |