理解できてません
何故か女装少年に懐かれました。解せぬ。理解できぬ。私の腕には女装少年と変態野郎が引っ付いてる。ちょ、猫好き助手の死んだ目具合がすごい。そして、荻野さんのスルースキルェ…
女装少年曰く「ノアがリアさんはすごく優秀で、ノアより毒に詳しいって言ってて、だから僕もリアさんに会いたいな、と思ってたんだよね。思った通りの人で嬉しいよ。」だそうです。
確かに毒にはノアより詳しいと思う。機械と毒の研究が好きだったからね。でもさあ、ちょっと誇張しすぎ。やめてよ、しがない自宅警備員にそんな期待しないでよ。そして、なにノアは布教してんの。やめてよ。てゆーか、荻野さんの前で毒とか言ったら逮捕されるじゃんんんん
とりあえず、私はこれを報告すべきだと思うんだ。
リア:なんか変態と女装少年に懐かれた。解せぬ。
そう、オズワールドのチャット機能に書き込んだ。すると、ピピピと携帯の着信音。
「お、なんだぁ〜圭。噂の彼女か?」
「ち、違いますから!」
あ、詰んだ。猫好き助手が携帯画面を見てから、私を見てくる。目があった。すべて把握した。
リア:ケイくんケイくん。ケイくんには裏切られた
ケイ:……自宅警備員じゃなかったの?
リア:ヤギに追いかけられて、警察に行ったら、ここに連れてこられた
ケイ:あー、前言ってたのって、それ?
リア:いえす
ケイ:大変だね…
リア:とりあえずさぁ、チャットで喋ってないで、私を助けてよ
ケイくんもとい圭くんが私を見る。それから、また私の携帯にピピピと着信音。画面を見る。
『圭くーん、こっちに来てぇ?』
「なんで言った側から俺を巻き込むの?!」
「美羽さん、こんなのと知り合いなの?」
『うん。とっても深い仲。』
「リアちゃんんんん??!!」
ざまあ。なにが「俺は巻き込まないでね」だ。許すまじ。おもいっきり巻き込んでくれる。
「圭くぅううんん?俺の美羽とどういう仲なのかなぁあ??」
「ちょ、因幡さん恐いから!ただの友達!」
「洋、やめろ」
三人が言い合ってる横で、圭くんをまるで豚を見てるような冷めた目でみてる女装少年に話しかける。関わってしまったなら、しょうがない。これで最小限にとどめねば。これ以上変なのと関わるのはごめんだ。ヤギとか袋とか殺し屋とかの変なのの巣窟には絶対関わらない。よって、ノアとは絶対会わぬ。
『優太くん、優太くん。』
「なんですか?」
『ノアには私のこと秘密にしてくれないかな…』
表情筋はあいかわらず仕事をしないまま、優太くんにそう言う。声色だけ、少し悲しめに出して。表情筋が仕事してくれないから、声だけで気持ちを伝えるしかないんだよ。めんどくさい。
「なんでですか?」
『ノアには、ね…ごめんね。ノアと仲良くしてくれてる優太くんには悪いんだけど…』
「いいですよー。僕に美羽さんの作った毒分けてくれるなら」
『……痺れ毒でも?』
「はい!」
「そんな物騒なこと話してないで助けてぇえええ!!てゆーか、痺れ毒も作っちゃだめぇえええ!!」
圭くんのそんな叫びはスルーして、私は持っていた痺れ毒を優太くんに渡した。
もうね、殺されてからは、毒は必須です。もしもの時ように、ね。ほら、世の中物騒なこと多いから。
そんなことを考えてる私は気づかない。自分が変人の領域に足を突っ込んでることを。
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