会ってみましょう
警察内を荻野と名乗った男の後ろをテクテクと歩く。そうだ、荻野だ。荻さんだ。鉄人だ。そんな感じでスッキリしつつ、足のコンパスの違いを憎む。なんだって、こんなに歩くの速いんだ。私?私がチビだからか?断じてそんなことはないと叫びたい。私の身長はこれからなんだ。これから伸びるんだ。もう二十歳だから無理とか言った人、爆せ。うっそぴょーん。そんなこと、八割くらいしか思ってないよーん。
そんなことを考えていると、ピタリと荻野さんの動きが止まった。と、思ったら、クルリと振り返る。ちょっと恐いとか、ごめん。思ったわ。
「すまん、速かったか?」
『あ、』
ごめんなさい。荻野さん。全力でごめんなさい。荻野さんったら、常識人だった。すごいマトモな人だった。心の中でディスってごめんなさい。私の大好きな人種だ。
『ちょっとだけ速いんで、ちょっとだけスピード落としてくれると嬉しいです。』
「ああ、悪かったな。」
そう言った荻野さんが私の頭を撫でる。やだ…すごい落ち着くんだけど…荻野さんには癒し効果もあったのね。私、感動です。荻野さん、めっちゃリスペクトしよう。荻野さん強いし、安全性、耐久性ばっちしじゃん。
『荻野さん、荻野さん。これからどこに向かうんですか?』
「俺の家に向かう。ヤギから匿うなら、俺の家が一番安全だろう。」
『荻野さんの家に行っても大丈夫なんですか?』
「俺の家族もいるが、平気か?」
『はい!』
さいっこうです。思わずガッツポーズ。なにこれ、荻野さんが神なんだけど。荻野さんの家族は私が守る!ってなるわ。よっしゃ。荻野さんの家で自宅警備員がんばろ。ふぁいてぃん、私。
そういえば、私の今まで住んでた家はどうなったんだろうか。とりあえず、荻野さんに言ってパソコンだけとってきてもらお。
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