君に捧げた唄

ピ、ピ、ピ、という独特の機会音と、ツンと鼻につく薬品の匂いで目が覚めた。
でも、光は見えない。ただ暗闇だけが眼下に広がる。


「目が覚めたか…」
『くうじょうじょうたろう…?』


耳に響くテノールの声。
それはわたしを安心させてくれた声と同じで、
でも、見えない。誰の顔も見えないの。


『みえなく、なっちゃった』


わたしがこぼした涙は、包帯に染み込んでいった。



Side.JOJO

ああ、またか。
一人でこいつは抱え込む。

ンドゥールに目をやられた時、俺はこいつを守れなかった。

血の涙をこぼす利麻を俺は見てられなかった。辛そうに、顔を歪めるこの女を。

いまだって、笑いながら涙を流す女が見てられない。

白い包帯に、利麻が流した涙が染みを作る。

俺は、こいつを護れなかった。

それでも、涙を流す利麻を愛おしく想う気持ちがある。

まるで壊れモノを扱うように、俺は利麻を抱き締めた。

( 7/15 )

 
[mokuji]



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -