僕は強くないから。

『ん…』


目が覚めると、見覚えのない天井が見えた。

死にたくない、けど、どうせ死ぬなら、空条承太郎がわたしを殺してくれればよかったのに。

そんなことをぼんやりとする頭で思う。

痛いのはイヤ。
誰かが死ぬことも、自分が死ぬことも。
でも、もう物語は動き始めたから。

わたしは、きっと逃げられない。
それが花京院利麻の、花京院典明の、運命だから。

なら、受け入れちゃえばいいよね。
痛みも、死も、すべてのことを。

だって、わたしが最初に典明の居場所を奪ったんだから。


「……目が、覚めたか。」


突然聞こえてきた低い声にビクリと身体を揺らす。

その声の主はドカリとわたしの前に座った。


『……』
「………」
『…………』
「……てめぇ、」
『ごめ、んなさ、い…』


何かを言われることが怖くて、拒絶されることが怖くて。
彼の言葉を遮って先に謝る。
傷付けてごめんなさい。貴方の手を煩わせてごめんなさい。…生きてて、ごめんなさい。


「…?俺が言いてぇのはそんなことじゃねぇよ。」
『?』
「てめぇ、女だろ。」
『ぁ…』


きっと、わたしが倒れたときに着替えさせたんだろう。
わたしの今着てる服は、典明と同じ制服じゃなかった。


「わりぃ。」
『だいじょぶ、です…』


ちょっとだけ頬を染める。
男の人に裸を見られたことが恥ずかしい。


「お、おい…」
『ぇ、?』
「…んで、泣いてんだよ」
『ぁ…ご、ごめんなさいっ!い、嫌だったとかじゃないですから…!』


恐い恐い恐い恐い。これから、わたしが典明と同じ道を歩むことが恐い。恐ろしくてたまらない。
胸がギュッと締め付けられる。


「チッ、」
『ぅ、あ…』
「めんどくせぇから、泣くんじゃねぇ。」


抱き締められた。
彼の広い胸がわたしの身体を包む。
温かいぬくもり、優しくわたしの頭を撫でる手のひら。

それら全てがわたしを安心させてくれて。


『ぁ、り、がとっ、』
「……やれやれだぜ」


彼の腕の中で泣きじゃくりながら、聞こえたのはわたしの識ってる彼の口癖だった。

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[mokuji]



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