哀しいだけの愛の歌
わたしが死んだあの日。
明確な殺意があった。快楽のための殺人がしたいという、殺意。
そしてわたしは殺された。名前も知らない人に、何度も何度も身体を刺されて。
悲鳴をあげるたびに、ニヤリと上がる口角。殺して、と願うほどの痛みがわたしを支配する。
涙を流して懇願する。
「どうか殺さないで」「まだ生きたい」
でも、そんな願いは叶わずに、わたしは死んだ。
そして産まれる。産まれたのです。
花京院利麻として。
産まれてくるであろう弟を待てども、弟は産まれてこない。そしてわたしは理解する。
"わたしは典明を殺して産まれてきた"
理解してしまえば、わたしは逃げられない。自分の運命から。典明の代わりを。
典明にならなければいけない。
そしてわたしはまた産まれた。
花京院利麻を殺して、花京院典明として
「まったく興味深いな、君は。」
『……』
「二つのスタンドを持っている人間はいない。なぜ、そんなことになったんだろうな」
頬を、撫でられる。氷のように冷たい手。それと比べるように、彼の手を思い出す。暖かいひだまりのようなあの手を。
「…空条承太郎のことを考えているのか」
『っ、』
「ふんっ、図星か。」
『んん、っ、』
冷たい唇がわたしの唇と重なる。
彼の犬歯が、わたしの唇を傷付ける。
一瞬鋭い痛みが走ったあと、彼は口を無理矢理こじ開け、わたしの舌が絡め取られる。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い
『ふぁ…んっ、ちゅ、』
「…ほう」
ボロボロと涙があふれ、こぼれ落ちる。
誰か、助けて、
貴方の声が聞きたいよ
貴方に名前を呼んでほしいよ
貴方の名前を呼びたいよ
貴方に、愛されたかった
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