姉さんが殴られてる。
「さっさと酒買ってこいッ!!」
『でも、父さ、』
「口答えしてんじゃねぇよォーーッ!!」
『うっ、』
幼い頃に死んだ女の代わりに僕を育てようと必死な姉さん。
僕はそんな姉さんが愛してる。
何故、姉さんはクソ男に殴られてるのに黙っているのだろうか。殺してしまえばいいのに。あんなクソみたいな男、生きてる価値ないだろ?
『ディーオ!どうしたの?そんなところで考え込んで!』
「おねえちゃん…」
『ふふ、ディオはもっと私に甘えていいんだよ?なんたって、私の弟なんだから!』
ニッコリ笑って、僕を《可愛い弟》だと信じて疑わない姉さん。
母さんも、姉さんも愚かだ。
自分より他人を優先していいことなんてないというのに!
無駄なんだ。あんなクソ男に尽くすことが。無駄なんだ。あんなクソ男が生きてることが。さっさと、淘汰されるべき人間のはずだッ!
僕の大切で愛おしい女を、殴る男なんて死んでしまえばいい!
「おねえちゃんは、ぼくのこと好き?」
『だあいすきだよ!私の可愛い天使!』
僕の言葉に至極嬉しそうに、ギュッと力強く抱き締める姉さん。
僕を抱き締めてる腕から覗く青痣があの男につけられたものだと思うと、憎悪の感情が心の内から湧き出す。
僕のものに手を出すな。
僕だけが、姉さんになにをしても赦される。
なぜなら、この女はいずれ僕のものになるのだから。
誰のものでもない。
このディオ・ブランドーのものに!
『ディオ、今日は一緒に寝よーね!』
「うん!」
ああ、愛してるよ。
僕だけの姉さん。