「では、今度は学校で。」
『はい。本日はありがとうございました。』
ぺこりと先生にお辞儀をする。すると、満足そうな笑みを浮かべた先生は部屋を出た。まあ、先生って言ってもすごく若いんだけどねー。ちなみに、そんな若い先生は、わたしが今度行く学校の助教授をやってるらしい。若いのに、すごいと思います。それだけです。
「どうだ。授業には追いつきそうか?」
『なんとか追いつけると思います。』
「そうか。それは良かった。」
嬉しそうなジョースターさん、もといお父さんにわたしもニコリと笑う。わたしの行く学校はお嬢さま学校らしい。そこ、わたしに似合わないとか言わないの。わたしだってそう思ってるんだから。今日の勉強が終わって、自室に戻る。そういえば、最近ダニーもジョジョもディオも見ない。きっと、外で遊んでるんだろうな。
『ちょっと、さみしいな…』
アンニュイな気持ちになりながら、ペラペラノートを捲る。ノート、といっても勉強用じゃなくて、レシピ用のノート。覚えてる限りのスイーツや日本料理などのレシピを描いたノート。それを見ていると、コンコンと部屋が叩かれた。
「あ、あのさ、は、入ってもいいかい?」
『ジョジョ…?あ、うん。入ってもいいよ。』
「失礼します…!」
意を決したようなジョジョにクスクス笑いながら、腰掛けるように椅子へ案内する。すると、手首をギュッと握られた。
「あ、あのさ、」
『?』
「ぼく、サクラになんか悪いことしたかい…?」
『え…?』
「なんだか最近、ぼくのことを避けてるようだったから…」
ジッとわたしを見つめるジョジョが気まずくて、思わず目線を逸らす。確かに、わたしは今までジョジョを避けてた。自分の気持ちを理解すると、ジョジョと話すことが辛かった。だって、こんな三十越えたおばさんが、こんな若い男の子を好きになっちゃったとか、犯罪ですよ。犯罪。
『ジョジョは、悪くないよ。』
「なら、ぼくを避けないでくれよ…サクラに避けられると胸が苦しくなるんだ…」
『ッ、ごめん、ごめんね、ジョジョ。』
ソッと、ジョジョがわたしの身体を引き寄せる。心臓はバクバクと高鳴ってて。
ああ、もう!
ジョジョの背中に手を回す。その姿はまるで恋人のよう。でも、わたしはこれから先、きっとジョジョに自分の気持ちを伝えることはない。自分のこの気持ちを箱にしまって、わたしはジョジョとディオの姉として、家族として、この家で一生を過ごそう。