姉さんの様子が最近おかしいことには気付いていた。ただ、それを指摘しなかっただけだ。
あの駄犬を撫でながら、涙を零した姉さん。姉さんが泣くなどあの日以来だ。姉さんがあの忌々しい男に襲われた日。


「何故だ…」


何故、出逢ったばかりであるジョジョにサクラは惹かれてるッ!幼い頃から共にいたこのディオではなくッ!!

憎い憎い憎いッ
ジョジョが憎いッ!

憤怒と憎悪の感情が身の内で燻る。ここに来るまでは僕のサクラだった。他の誰でもない、このディオのッ!何故何故何故ッ!そんな貧弱なやつにサクラが惹かれるのだッ!!


『…あ、ディオ?』
「姉さん…」


気配に気付いたサクラが僕を視界にいれる。それからゴシゴシと涙を拭くと、いつもの笑みを見せた。


『…えへへ。変なとこ見せちゃった。』
「何故、」
『ディオ、お菓子作りたいな。』


わざわざ僕の言葉を遮って、にっこりと笑うサクラ。

イライラする。それもすべてジョジョのためなのか。僕よりもジョジョのほうが大切だと言うのかッ!


「…姉さんは、ジョジョよりもこのディオのほうが大事だよなあ?」
『うん…』


その答えに満足してサクラの肩を抱き寄せながら、サクラの髪にキスをした。

いつかこのディオのものにしてみせる。今は姉弟だとしても、いずれはこのディオの花嫁だ。僕の子を孕み、僕だけのために生きる。

ああ、素晴らしいな。


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