殺してやる。
ポロポロと声を出さずに涙を零して、僕にしがみつく姉さんを抱き締めながら思うことはそれだけ。
血の繋がりがなんだ。このディオ・ブランドーのものに手を出そうとしたんだ。
殺してやるッ!!
「姉さん、」
『……あは。ディオ、ごめんね。』
腕の中から姉さんが抜ける。
腕の中からいなくなった姉さんは、泣き腫らした目で僕に笑いかけた。
『ディオ、父さんを怨んじゃダメだよ』
「…何故。」
『ディオが、大切だから。』
そう言って優しく微笑む姉さん。
僕が大切だと?大切だというなら、あの男を殺させてくれ。姉さんを襲った男を。
姉さんを襲おうとした男どもなんて死んでしまえばいいだろう?
『ほら、ディオ。父さんが起きる前に家を出よう?』
にっこりと微笑む姉さんは、目を腫らしたこと以外は、すでにいつもの姉さんだった。
僕の手をすり抜けた姉さん。
ぬくもりが、消えた。
十一歳の春。
僕は父親を殺すことにした。