ひかり。
真っ暗な世界に光が射した。
でも、私にはその光にあたる資格がないの。
人を殺したんだから。
私の今の居場所は泉奈留をコロシテ奪ったんだよ。
だから私にあの暖かい光にあたる資格はない。
真っ暗な世界で一人でいいの。
「ばっかみたい。」
『……………だぁれ?』
私1人だった世界に声が聞こえた。
「アンタはそれで満足?私はぜっんぜん!満足じゃない!居場所?そこはもともとアンタの居場所でしょーが!!馬鹿!」
『ぇ…だ、誰?』
「ほんっと馬鹿!それでも私?私はそんなじゃない!しかも私の名前も忘れたの?アンタと同じでしょうが!馬鹿馬鹿馬鹿ーーーーっ!!」
????私の頭の中は?でいっぱい。
この声は今なんて言った?私?
どういうこと?
「あっ!わかんないって顔してる!アンタは前世の自分もわかんないのかっ!!」
『前世の、私…?』
黒い髪に黒い瞳。
おとなしそうな外見からは、強気な口調で言葉が飛び出す。
「いえすっ!あのねぇ、泉奈留はアンタ…もとい私の居場所!アニメに泉奈留なんて名前のキャラいたの?いないでしょ?私が生まれ変わったのがたまたまアニメの世界でたまたまアニメの知識を持ってた。そんでもって、たまたまキャラの姉になって、たまたま!選ばれし子どもになった!それで終了!終わり!フィニッシュ!それをなに?私はグダグダ悩んで!インプモンとマリンエンジェモンに心配かけて!私と私は同じ!だから、アンタが悩む気持ちは分かる!でもね、私は周りを見なすぎだよ!私の言葉で救われた人だっているんだよ?それを分かってあげてよ。私は必要とされてる。少なくともインプモンとマリンエンジェモンはそう思って泣いてる。《軌跡》の紋章だって誰が選ばれし子どもたちの軌跡だって言ったの?軌跡は私の軌跡だよ。確かに《軌跡》の紋章が光るのはみんなの紋章が手に入った時だった。でもね、《軌跡》の紋章は私がインプモンとマリンエンジェモンと過ごした証。私は確かにチートな存在だよ。でもね、それは私がみんなを支えるためだと思うの。だって私がいない世界はみんなが壊れそうだったじゃん。だから、」
知らない声、もとい前世の私だと言う声のマシンガントークを聞いていると何故か涙が出てきた。
きっと私が言っているのは私自身のこと。
『ごめんなさい、ごめんなさい…そうだったの。私の言う通りだって今なら分かるよ…けど、私は《私》を受け入れられなくて、私は《私》を捨てたんだ…』
「やっと、思い出してくれた?」
『うん…私は私の道を行けばいいんだよね。ごめんね、ごめんね。私は最初からいていいんだよね。私はみんなと旅してもいいんだよね。私は…』
インプモンとマリンエンジェモンのパートナーでいいんだよね。
私の言葉に《私》は私と同じようににっこりと笑った。
生まれたばかりの頃に捨てた前世の記憶。
私はそれを取り戻せた。
中途半端に前世を思い出して、悩んで悩んで、赦しを望んだ。
けど、それは違くて。
私の名前は奈留。今も昔も奈留。
私はやっとお父さんとお母さんの子どもとしての泉奈留、選ばれし子どもの泉奈留、インプモンとマリンエンジェモンのパートナーとしての泉奈留として生きていける。
《忘れててごめんね》
《私》にそう謝ると、《私》は泣きながら笑顔を作って、私の身体を抱き締めた。
《やっと一つになれたね》