インプモンSide

奈留はなにも食べなくなった。
かろうじて、ぼんやりと目を開ける奈留の口の中に水や流動食を流し込めるだけ。決して自分からは食べようとしない。

それでも俺は奈留がいつ目醒めてもいいように飯を作り続ける。

例え奈留が一生このままだろうと俺とマリンエンジェモンは奈留を守り続ける。
俺たちは奈留の唯一のパートナーだから。


「インプモン。あの子たちピラミッドの中に入り始めたよ。」
「そうか……。これで紋章が全て手に入って奈留の目が醒めればいいんだけどな…」


ピッコロモンの家で奈留が言っていた通りあいつらが紋章を全て手に入れれば奈留の中の何かが変わるはずだ。

実際、タケルの紋章が手に入って“軌跡”の紋章が光った時に僅かだが奈留の目に光が戻った。

今の俺たちにはそれにしか頼れない。


「奈留…僕たちずっと奈留のこと待ってるからね。大丈夫…大丈夫だよ。僕たち奈留が戻ってくるって信じてる。奈留だぁいすき。」


マリンエンジェモンは奈留の頬に小さな手を添え、まるで宝物を扱うように奈留に囁く。

それを見て俺はなにも言えない。
マリンエンジェモンも俺もそろそろ限界なんだ。

胸が苦しい。
奈留がいないことがこんなに辛いなんて知らなかった。

早く、早く最後の紋章を手に入れてくれ…!


「早く…」
パァァァアァアアァア
「っっ、!インプモン!」


光った…!
奈留の紋章が光った…!

俺とマリンエンジェモンはそれを待っていたかのように奈留の名前を呼び続ける。

今しかない。

そんな予感がする。今、奈留の名前を呼ばなかったもう一生奈留とは逢えない…!


「っ!奈留!奈留!」
「奈留気づいて!お願いだから僕たちに気づいて!!僕たちは奈留が必要なんだよ!ずっとずーっと奈留だけをここで待ってたんだ!!」
「お前がいなかったら俺たちもいなかったんだ!だから!頼むから!目を醒ませ!お前は!」
「「俺/僕たちのパートナーだろ!!」」


奈留の声が聞こえた気がした。

mae ato
(32/47)

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -