モルジアナのいない行為の終わった部屋で、足首を鎖で繋がれた男を見る。 『ゴルタス、』 「………は、ぃ」 『ああ、無理して喋らないでもいいから。』 わたしの言葉にコクリと頷いたゴルタスに、笑顔を向けてから、わたしはまるで独り言のように話始めた。 『今まで、ゴルタスには無理をさせちゃったよね。無理矢理、鎖で繋いで。でも、もうすぐ君は自由になれるよ。ううん。ゴルタスだけじゃない。他の奴隷たちも、解放される。本当の意味で、自由になれるの。モルジアナだって、わたしから解放される。おかしくなったわたしから。ごめん、ごめんね、ゴルタス。』 「………」 それはただの一方的な懺悔でしかない。 わたしは領主で、彼らを奴隷として扱ってる張本人。 彼らがわたしを赦すことは一生ない。 それでも、構わない。 モルジアナがいてくれたなら。 『ゴルタス、わたしは君に命令する。お前は一生生きろ。』 「!」 『死にそうになっても、生きて生きて生き抜け。わたしを放って、お前は生きて。それがわたしの命令。』 わたしの言葉に口を開こうとしたゴルタスを遮るように、わたしは言葉を続ける。 『何故、なんて聞かないでね。ゴルタスはただ黙ってわたしの言うことを聞きなさい。』 そう冷たく言い放ったわたしの脳内に浮かぶのは、昔見たゴルタスとわたしの運命。 わたしは自分の運命を呪わない。 だって、わたしは、あいつはそうなって仕方のない野郎だったから。 わたしもあいつと同じ。 モルジアナを奴隷として自分に縛り付け、わたしのモノとして扱った。純粋な彼女を穢した。 わたしなんて、生きてる価値がない。 でも、ゴルタスは違う。 ゴルタスはいい人。善人。 一方的にだけど、わたしは彼に友愛でさえ抱いてる。 だから、わたしは呪う。彼の運命を。 殺させやしない。 ゴルタスは生きるべき人間なんだから。 『あぁ、もうすぐかな。』 先日届いた、葡萄酒を届けるという手紙を見ながら、わたしは一人呟いた。 |