27

ジュダルくんに渡す資料を山積みにしながら部屋まで運ぶ。
神官って大変なお仕事なんだね。
まだ二十歳なのに、こんなにいっぱいお仕事してるなんてジュダルくんはいい子だねぇ。
なんて思いながら、重い荷物によろけそうになる。


『…はぁ、男に産まれればよかった』


そしたら、こんな重い荷物も軽々と運べるのになあ。


「半分持とう」
『へ?あ、こ、紅炎様、』


ヒョイッと私から資料を奪った人物を見る。

え?え?なんで紅炎様?
皇子さまにもお仕事があるんじゃないの??
ああっ、てゆか、それより皇子さまに荷物なんて持たせたら駄目じゃない!


『あ、あの、私自分で持てますから』
「おまえは男ではないんだから、こんな重い資料は男に任せればいいだろう?」
『いえいえ、皇子さまにこんなことさせたってバレたら、怒られちゃいます』
「………ふっ」


ジッと紅炎様を見たら、笑われてしまった。

あらまあ、紅炎様って笑うと可愛い。


『ふふ、紅炎様って、笑うととっても可愛いんですね。』
「…そういう花も笑うと可愛いな」
『あらまあ。お世辞でも嬉しいです。』


紅炎様のお世辞ににっこりと笑ってお礼を言う。でも、整った顔してる紅炎様に言われたら複雑。
ジュダルくんも整った顔してるし…この世界はかっこいい子か可愛い子しかいないのかなあ。


「花。ここの生活には慣れたか?」
『え?あ、はい。おかげさまで慣れてきました。なにからなにまで、本当ありがとうございます』
「そうか…なにか不自由なことがあったら、なんでも言うといい」
『いえ、こちらこそ、私がなにかおかしなことをしてしまったら、なんでも言ってください。直しますから。』


にっこり、笑って答える。
本当、紅炎様が暴君皇子じゃなくて優しい皇子で本当よかった。おかげで、こんなに快適な生活させて貰ってるし。
私にはもったいないくらい。


「……なら、おまえの言葉使い、どうにかならないのか?」
『えっと、なにかおかしな言葉使いでしたか?』
「…その敬語、気に入らない」


そんなこと言われても。

ジュダルくんも紅炎様もフレンドリーな人が好きなのかなあ。
侍女が神官さまや皇子さまにフレンドリーな言葉使いしてたら、駄目でしょーに。


「二人の時だけでもいい。その敬語をやめろ」
『…命令なんですか?』
「…命令だ」


唇をムッと尖らせた紅炎さまにクスリと笑みをこぼす。
この人可愛い!皇子さまなのに、可愛い!どうしよう!


『ふふっ、じゃあ、二人のときだけ、紅炎くんって呼ぶね。』
「…ああ。」


少しだけ笑みをこぼした紅炎くんに、私も微笑む。
紅炎くんって、素直で可愛らしい。


『あ、そうだ。ずっと言いたかったんだけど、私が奴隷商人に売られそうなとき、助けてくれてありがとね。』
「……いや、」


お礼を言った私から紅炎くんが目を逸らす。そっけない返事に不安になるけど、耳が真っ赤に染まってるのを見て、紅炎くんもまだ子どもだなあ、と思って笑った。

って、あ。紅炎くんに、荷物持たせたままだった。


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