26.5
『神官さま、』
俺の侍女になった花は、俺を名前で呼ばないで神官って呼ぶようになった。
ムカつく。
俺は名前で呼ばれたい。
こう、なんかわかんねえけど、モヤモヤする。
花といると、すっげー落ち着いてイライラが治まる。
だから、名前で呼ばれないとモヤモヤするっつーか、なんかわかんねえけど。
だから、俺が花が異世界から来たのを言い当てたときの様子にびっくりした。
普段見せないような弱気な顔が珍しくて、まだ知り合って四日だから、見たことないのは当たり前かもしれねえけど、俺はその弱気な顔がもっと見たいって思った。
俺の名前を呼んで、安心させてほしい。
それから、花の弱気な顔は俺だけに見せてほしい。
わかんねえけど、そう思った。
花がいなくなった部屋でプリムラの髪を弄る。
「なあ、プリムラは花が好きか?」
「……?すき…」
「ふーん」
花の名前を出したとたん、無表情の顔を崩すプリムラになんかイラっとして、髪をボサボサにしてやった。
アル・サーメンは、花をどうする気なのか考える。
花には殺したり、解剖しないっつったけど、あいつらならやりそうだ。
でも、花には価値がある。
そう簡単に殺しはしない。
そうなったら、考えられるのは花を飼い殺しにすること。
この煌帝国から出しずに、玉麗のところで観察する。もしくは、
「いや、ねえか…」
もう一つの考えは、吐き気がしたから考えるのを止めた。
「(花を皇族の女にすればいいなんて)」
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