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アラジン、ウーゴくん、プリムラ、ジュダルくん。
ちょっと助けて欲しいなあ。
「……」
『……』
紅炎くんのベッドの上で正座。
紅炎くんはさすがに正座じゃないけど。
この無言の沈黙が痛々しい。
『あの、私、なれませんよ…?』
「……」
なれない、っていうのはもちろん紅炎くんの花嫁候補になること。
仮面の男の人曰く、正式な花嫁じゃなくて妾って立ち位置らしいけど…
絶対無理だよねぇ…
『私、帰らなくちゃいけないところありますし…』
「その堅苦しい喋り方はしなくていい。もっと楽にしろ」
『あ、うん。…じゃなくて、私、子どももいるし…』
「……子どもがいるのか、?」
『はい!とっても可愛い子が二人!』
紅炎くんににっこり笑顔で答える。
アラジンとプリムラの顔を思い出すと、本当幸せになれる。早くアラジンとプリムラを会わせてあげたいな。
「見えないな…」
『ふふ、そうかなあ?』
「ああ」
そんな穏やかな雰囲気で思うこと。
とにかくこの状況を脱出しなくては。
『あの、紅炎くん、?』
「なんだ」
『えっと、何故近付いて来ているんですか?』
「……わからないのか」
『いえ、あの、その、』
ごめんなさい。私も生娘ってわけじゃないので意味くらいわかります。でも、思わず敬語になっちゃうくらい混乱もしてます。
だんだんと近付く紅炎くんとの距離に泣きたくなる。
出逢ってまだ一週間。そのうち、話したことがあるのはほんの数回。
なんで、仮面の人は私を国の皇子の花嫁候補になんてしようとしたの。
素性もわからない女の子なのに。
…あ、異世界から来たからとか?
「紅炎!花が来てるだろ!」
そこまで考えたところで、ドンドンと扉の叩く音。あ、いまにも壊れそうな音出してる。
「ジュダルか。なんだ?」
「どういうことだよ!花が妾って!」
「…組織が介入してきた。花は組織にとってどういう女なんだ」
「…それは、アレだろ?」
「アレでわかるか」
あらまあ。なにこの二人。まるで兄弟みたい。
ジュダルくんと紅炎くんが、なんの話してるのか意味はわからないけど、見てて和んだからいいかなって思った。
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