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「……はいれ」
コンコンとノックをすると、紅炎くんから入ってもいい許可がおりたので、一言失礼します、と言って中に入る。
中には紅炎くんと、ジュダルくんとよく一緒にいる仮面の男の人。
うん?なんで?
『あの、』
「すまない」
『はい?』
ポツリ、紅炎くんが近付いてきたと思ったら、そう呟く。
なんで謝るんだろう…?
私、なにかされたっけ?
「いやぁ、花さん。よく来てくださいました」
『あ、あの、』
「今日はちょっと、花さんに用事があるんですよねぇ」
仮面の男の人はそう言って、私の手を握る。
えっと、なんか嫌な予感がする。
ジュダルくんは仮面の男の人が、私がこの世界じゃないところから来たって聞いたみたいだし…どうしよう…
ちなみに、ジュダルくんには私がこの世界じゃないところから来たってバレちゃってる。
私の周りを黒いルフが飛ぶのはおかしいんだって。ところで、黒いルフと白いルフの違いがいまだにわからないんだけどなあ、私。
なんて、現実逃避が叶うわけでもなくて。
「花さんに、この煌帝国の第一皇子の妃になっていただきたいんですよ」
……うん?
仮面の男の人の後ろで、罰が悪そうにしてる紅炎くんに首を傾げたのは言うまでもない。
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