21

冷気がどんどん大きな氷柱のようなものになってゆく。

ダメ、何故だかわからないけど、そう思った。


『ダメ!』
「あ、おい!」


そう叫んで、黒い男の子が掴んでる杖を取り上げる。この子を止めないと、なんだかイヤな予感がした。


「なあ、なんで止めんだよ。あんなやつら、殺しちゃえばいいだろ?」
『、』
「なー、聞いてんのか?」


男の子の言葉にズキズキと心が痛む。

まだ子供なのに人を殺すだなんて…!
きっとまだ二十歳くらいなのに…

ギュッと、男の子から取り上げた杖を持つ手に力を入れる。


『ごめんなさい。ごめんなさい。私はどうなってもいいですから、この子たちはお助けください。』
「な、なに言ってんだよ!お前、馬鹿じゃねぇの!」
「へっ、へへ!女ァ、なんでもしてくれるんだよなァ?」


二人を背中に隠しながら、そう言う。
黒い男の子のほうが、私よりも大きいけど、そんなの関係ない。

ここから、この子たちを逃がすほうが大事。


『…いい?貴方たちは早くここから逃げるの。』
「はぁ?!俺があいつらを殺せば…」
『ダメだよ。そんなこと言っちゃ。君はまだ幼いんだから。』


黒い男の子の唇に人差し指を当てて、そう微笑む。

人を殺すなんて、ましてやまだ子どもの彼が言う言葉にはふさわしくない。

まだ長い人生。人を殺していたら、心が疲れちゃう。


「へへ、じゃあ、行こうぜぇ?」
『……はい。』


盗賊たちに肩に手を回されると、私は子どもたちを振り返る。


『(その子をよろしくね)』


黒い男の子に口パクでそう伝えると、私は彼らを安心させようと必死で笑顔を作った。


「意味、わかんねぇ…」


黒い男の子の呟きは聞こえなかった。

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