14

私が久しぶりにアラジンに逢うと、アラジンはこどものように私に抱き付いてきた。

ほんと、可愛いよねぇ。

私を見て、ポカンと口を開けてるアリババくんも可愛かったけど。

アリババくんの名前は、ウーゴくんからだいたい聞いてたので知ってた。
ウーゴくんは身体だけだけど、何故か外の景色がわかるらしい。すごいよね。


『で、貴方たちの名前は?』


私の目の前には、心が何処かに行ってしまったような男の子と、それを守るように立つ可愛らしい女の子。


「ぁ…わ、わたし、」
『うん。ゆっくりでいいよ?』


オドオドと口を開いた女の子ににっこりと笑いかけると、その瞬間、大きな振動が私たちのいる場所を揺らした。


「こ…これは…何者かが、外から“道”を閉じようとしておる…」
『あらまぁ。大変。』


外に帰れなくなったら大変だよね。

そんなことを考えていると、アモンさんが外への道を作ってくれた。


『貴方たちも行こう?』


動こうとしない二人に手を伸ばす。
でも、女の子はオロオロとしながら、男の子と私を交互に見ていた。


『?男の子は動けないの?』


男の子に手を伸ばそうとすると、血だらけの男の人が私と女の子の前に立つ。


「ゴ…ゴルタス…?生きて…」
『……』


ゴルタスと呼ばれた男の人の目は、哀しみと憎しみ、それから決意の瞳に染まってた。

………これが、奴隷。

女の子が奴隷なのは気付いてた。
だって、鎖に繋がってるから。
それは聖宮で読んだ書物に載ってたものと同じ。

…なら、男の子は奴隷使いって、ことかな?


「こ…こんな男を…、外へ出しては……ならない…」


私は奴隷の気持ちも、奴隷使いの気持ちもわからない。

けど、

「お…おれも…外へ出るべきではない…一族の誇りを忘れ、奴僕に身を窶し、こんなばかのいいなりに…人の命を…」

貴方は死ぬべきなの?


『違う…貴方たちは生きるべき。』
「!?」「……」


女の子が私が呟いた言葉に、驚いて目を丸くする。男の人は、静かに私を見るだけ。


『ゴルタス…でしたよね?貴方は、死にたいの?死んで、なにが残るの?私は、まだ貴方たちのことを知らない。わからない。ただ…貴方たちを知りたいと思う。死んでほしくはない。』
「……おれは……」
『その男の子は償うべき。死ぬんじゃない。生きて、自分の罪をしっかりと見つめて、同じことを繰り返さないべきだよ。』


奴隷であったとき、人を殺した人は死ぬべき?

確かに誇りは大切。
でも、その誇りを忘れてまで、生きたかったんだから、生きるべきだと思う。


『恐ろしさから逃げないで。』


本当に恐ろしいものは、この世にただ一つ。

愛されないことだから。


『だから、みんなで生きよう?』


愛してもらえないと嘆くなら、私が愛すから。
優しくしてもらえないと恐がるなら、私が優しくするから。
彼が憎いと叫ぶなら、その憎しみは私が受け入れる。

だから、生きることを諦めないで。



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