12
私とウーゴくんだけの部屋は寂しいものがあったけど、なんだかんだで幸せだった。
穏やかな時が流れてた。
『……なんだかこれって、熟年夫婦みたいだよね。』
「じゅっ!?」
『また顔真っ赤だよ?』
ウーゴくんは可愛いねぇ。
「花がいきなりそんなこと言うからだよ!」
『熟年夫婦?』
「ワザとだよね?!」
『ふふ。ウーゴくん、可愛い。』
顔だけのウーゴくんが、口を尖らせる。
ウーゴくんの身体は、アラジンと一緒に外に出てしまったから、ここにいるのはウーゴくんの顔だけ。
それに、ウーゴくんは小さく出来なくなってしまったみたいで、ウーゴくんの顔は私の身長の倍くらいある。
身体は大きいのに、性格が可愛いんだからいいんだけどね。
『ね、本持ってきてくれる?』
そう言うと、近くにいた埴輪みたいな子たちが争うように、たくさんの本を持ってきてくれる。
この子たちは、アラジンがいなくなって、寂しいからウーゴくんと作った不思議物体。
私がいなくなっても、顔だけになったウーゴくんをこの子たちがサポートしてくれるように。
埴輪くん(私命名)を見ていると、ウーゴくんが声を出した。
「あ。」
『?どうしたの?』
「…アラジンが、迷宮に入った。」
その言葉に笑みが固まる。
もう、そんな時期。
案外、早かったかもしれない。
なんにも知らないあの子が、迷宮に、ジンのいる場所に入った。
『もう、お別れかぁ…』
「花…」
『アラジンと逢えるのは嬉しいけど、ウーゴくんともう話せないのはイヤだなぁ。』
そう零すと、ウーゴくんは困ったように嬉しそうに笑みを浮かべる。
もう、この顔には逢えない。
「花、」
『ねぇ、ウーゴくん。私ね、ウーゴくんに感謝してるの。』
「なにをだい?」
『ウーゴくんがいてくれたこと。』
きっと、私一人でアラジンを育ててたら、いつかは挫折してた。
自分の知らない場所、自分の名前を呼んでくれる人もいない、赤ちゃんとだけいる空間。
そこに、何年もいたら、私は気が狂ってた。
『でもね。ウーゴくんがいて、私の名前を呼んでくれて、私と話してくれたから、私はアラジンをちゃんと育てられたんだよ。』
「…俺は、花の心の中に少しでも、いられたかい?」
心配そうに、まるで聞いてはいけないことを聞く子どものようなウーゴくんに、フワリ笑みを浮かべる。
『ウーゴくんは、私の心の拠り所になってくれてたよ。ありがとう。』
もうウーゴくんとは喋れないけど、私はウーゴくんと話したこと一生忘れない。
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