6
アラジン 5歳
「ねぇ、なんで僕には友達がいないの?」
物心がついてきたアラジンに言われた言葉。
いつかは聞かれると思ってたけど、やっぱりそれに答えられないなんて、保護者失格かもしれない。
ある日、絵本を読んでいると、アラジンが呟いた言葉に私は気の効いた言葉をかけられなかった。
「僕も外に出たい」
「友達欲しい」
「遊びたい」
子ども特有の願い事がアラジンの口から出るたび、私は答えられない。
アラジンを聖宮から出すことは禁じられてる。
それはアラジンが狙われているから。
でも、そのことをまだ幼いこの子に言うべきではない。
溜まりに溜まったアラジンの願い事は爆発する。
『っ、ア、ラジンっ、!』
「僕も外に出たい!!ここから出してよ!!」
「アラジン!力を抑えて!」
アラジンから強い光が出る。
今はまだウーゴくんがアラジンを抑えつけてるから、私に被害はないけど、これ以上強くなったら、きっと私なんてすぐに吹き飛ばされちゃう。
でも、私はアラジンを育てる人だから。
「!花っ!」
身体の大きくなったウーゴくんに抑えつけられてるアラジンの側に近づく。
近づくにつれて、火傷するんじゃないかってくらい熱さが増す。
『アラジン、』
「僕も外に出る!!」
『ごめんね、アラジン。落ち着いて?』
「花っ、」
熱い。ジュワッと手から嫌な音がする。
でも、私はこの子の親として、この子を離しちゃいけない。
「う、あ、花さ、ん、?」
『アラジン、落ち着いて、ね?』
私を認識すると、アラジンは泣きそうな顔をして私に抱き着く。
「僕も外に出たいよ、なんで僕はここにいなくちゃいけないの?僕も、自由になりたい。」
その願いは、当然の願い。
まだ小さいんだから、そう思うことは間違いじゃない。
けど、
『ごめんね、アラジン、ごめんね』
「なんで、謝るの、?花さんなら、ここから出せるでしょ?ねぇ、お願いだよ。僕をここから出して?」
涙が零れそうになる。
私はアラジンを育てるために、こことは違う世界から連れて来られただけ。
でも、私はアラジンを本当の子供のように愛おしく思ってる。
だからアラジンの願いなら、なんでも叶えてあげたい。
でも、それは私には出来ない。
「アラジン…」
ウーゴくんがアラジンの肩に手を置く。
「俺が、アラジンの願いを一つだけ叶えてあげるよ。」
「じゃあ、僕を、」
「でも、アラジンをここから出すわけには行かないんだ。それ以外なら、なんでも叶えてあげる。」
そう言ったウーゴくんは少しだけ悲しい顔をしてた。
きっとウーゴくんも私と同じ。
アラジンの願いをできることなら叶えてあげたい。だけど、それはアラジンの命を危険に晒すこと。
お願い、アラジン。
私たちは、アラジンが大切なの。
「なら、僕はーーー」
その“願い事”に私とウーゴくんはちょっとだけ目を見開いて、それから笑みを零した。
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