御狐神くんも考えたりするのです。(13/18)



僕と蝶々さまは同じだった。
一族から畏れられ、自由を奪われた。

いや、僕と蝶々さまは明らか違うところがあった。
彼女は、自分が監禁されることに諦めていた。
学校なんてものも知らず、自分の姉だけを人として認識していた。
感動を持っていた。

僕とは違って、彼女の持っているものは“姉”と呼ばれる存在だけ。


自由だって、求めてはいなかった。


彼女と出逢ったのは、凜々蝶さまからの手紙で興味を持ったから。

蜻蛉さまに変わってやり取りし始めた凜々蝶さまとの文通。彼女の手紙にはいつも蝶々さまのことが書いてあった。


その蝶々さまが、青鬼院にいると聞いたとき、僕は興味本意で彼女に近付いた。

可哀想な、憐れな彼女に。

初めて見る僕を前に、ただ義務的に挨拶をして、義務的に笑った。
つまらなかった。
けど、たまたま夜中、彼女の部屋を通ったとき、胸が締め付けられた。

彼女は静かに嗚咽を零しながら、姉を呼んで泣いていた。

自分と同じ。
彼女なら、蝶々さまなら、僕の心が癒せる。
だって、僕と同じなのだから。

彼女の心には、姉しかいない。
なら、その心に“御狐神双熾”を植え付ければいい。
彼女にとっていなくてはならない、そんな存在に。


ねぇ、蝶々さま。
蝶々さまは、きっともう僕から離れることはできません。
僕がそう育てたのですから。


彼女の心に“御狐神双熾”を植え付けるのは簡単だった。彼女は簡単に僕のいう事を信じ、僕に笑顔を見せた。

僕の可愛い可愛い蝶々さま。

大事にしてあげますから、僕から逃げてはいけませんよ。


逃げたら、どうなるか分かりませんから。






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