天女は夢の中(18/19)
暗い暗い、蝋燭の光だけが灯る世界で、歌を奏でる女が一人。
彼女の片足は切断され、痛々しい傷痕になっていた。
男が一人歩み寄る。
切断された足に唇を這わしながら、彼女の素肌に手を伸ばす。
神に身を捧げた彼女は、悪魔に全てを奪われた。
逃げる術も、心も、身体も。
彼女には、夢と現実、自分がどちらにいるかわからない。
愛おしい人に愛される夢と、冷たい部屋の中で閉じ込められる現実。
『どちらが幸せだったのでしょう。』
あの世界で彼等とともに盗賊に殺される運命と、この世界で彼に愛される運命。
「ハルミヤ、愛してる。」
『グリフィ、ス、様…』
儚い彼女を捕まえた。
愛おしい愛おしい彼女をオリの中に。
ああ。愛してるハルミヤ。
ハルミヤのその切断された足も、深紅に輝くその瞳も、その身体に流れる血も、ハルミヤの全てを。
オレは全てを手に入れる。
オレが全てを手に入れた時、その傍らには愛しい女。
なぁ、ガッツ。
オレを変えたのは、お前とハルミヤだよ。
感謝してる。
おかげで、オレは全てを手に入れることができるのだから。
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