天女の親友の願い事。(11/19)
「ハルミヤは、逃げたいのか?」
キャスカ様にそう言われ、すぐに答えることのできなかった私は、自分がわからない。
キャスカSide
私たち、鷹の団の団長グリフィスには、とても大切にしてる女がいる。
私は最初、その女が憎かった。
でも、初めて会った時、私はこの少女とも呼べるような無垢な女に憐れみを抱いたんだ。
今思えば、グリフィスはあの女を見つけた時から、おかしかった。
誰にも見せないように自分の天幕に隠して、彼女を見たことがあるやつは、この鷹の団でも少ない。
ゾッとした。
彼女が逃げないように、足の腱を斬ったと聞いたときは。
それでも、彼女は初めて見るグリフィス以外の人に笑みを零した。
その笑みはまるで天女のように美しかった。
金の髪に、紅い瞳。
恐ろしく、綺麗だったんだ。
それと同時に、私は彼女を見るグリフィスの瞳が狂気に染まっていたのを見た。
グリフィスは見つけたんだ。自分の鞘を。
自分を包み込む、自分だけの宝を。
私はグリフィスの剣でありたかった。
望んだのは、グリフィスを包み込むことじゃない。グリフィスに包み込まれることだったんだ。
話を聞けば聞くほどに、彼女は憐れだった。
自分の見知らぬ土地で、グリフィスに捕まりきっと、彼女は生涯グリフィスからは逃げられない。
『キャスカ様は、彼が好きなのですか?』
「……私は、ハルミヤの方が好きだよ。」
そう答えると頬を染めて、お礼を言うハルミヤに笑みが零れる。
ハルミヤは、絶対にグリフィスの名前を呼ばない。
何故か、そう聞いたことがある。
その時ハルミヤは、困ったように、泣きそうな顔で笑って誤魔化した。
私たち、鷹の団はただの傭兵団ではなくなった。
子爵となったグリフィス。
誰にも知られずに、ただ武器に祈りを捧げるハルミヤ。
私はどうか、二人が幸せにあってほしいと願う。
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