男は魅了された(3/19)
暗い森の中を移動している時だった。
「なぁなぁ、さっさとこんな所出ようぜ!グリフィスよォ!」
「…そうだな。」
ジメジメとした暗い雰囲気の中、森の中を進むのは思いの外気味が悪い。
馬に乗り獣道を歩いていると、微かに何かの音色が聴こえた。
「……なにか、聴こえないか?」
「お、おい、変なこと言うなよ!」
「いや、聴こえる。」
馬から降りて、声の聴こえる方に向かう。
後ろから、仲間たちが呼ぶ声が聞こえたが、それは無視して声の聴こえる方へ向かった。
『〜〜〜♪』
「っ、」
オレたちとは、違う。
そう、感じた。
サラサラな金の髪に美しい緋色の瞳、何処かの民族衣装のような透明感のある白を基調とした衣装。すべてが、その緋色の瞳を引き立たせていた。
その周りでは、何人もの盗賊だと思われる男たちが、気持ち良さそうに、幸せそうな笑みで死んでいた。
カチリ、緋色の瞳と目が合った。
ポロポロと涙を流しながら、虚ろな瞳でオレを見る彼女に、全身の血が沸騰するような感覚を味わった。
フラリと、倒れ込みそうになる彼女を抱き上げる。
『ぁ…、』
オレの腕の中で、何かに手を伸ばしかけた彼女の腕は、なにも掴むことなく空をきった。
これが、オレと彼女の出逢い。
狂おしいほどの愛を知った。
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