夢の中のお伽噺(14/19)


『ですが、それは夢のお話なのです。』


山籠りをしている最中、再び出逢った見知った女は、そう言って真紅の瞳から涙を零した。


ガッツSide

遠征が終わり、俺は鷹の団を抜けた。
自分の夢を見付けるために。

グリフィスに縋っていられない。

俺は俺の目的のために、鷹の団を出た。
それが、グリフィスにとって、どんなことになるかも知らないで。


『……ガッツ、様…?』


それから数日経って、森の中で修行を続けてると、女に会った。

一度見たら忘れられない、妖艶な女。


「…なんであんたがここにいるんだ?」


こいつはグリフィスにとって、あってはなくてならない存在だったはずだ。
あのグリフィスが、こいつを簡単に逃がすはずがねぇ。


『…ガッツ様、少しお話しませんか?』
「……あぁ。」


長い話をこの女は話し始めた。

自分がこの世界とは違う場所から来たこと、グリフィスに出逢って自分の処女を奪われたこと、グリフィスが狂ってたこと。

確かに、グリフィスは狂ってたと思う。
グリフィスがこの緋の瞳を持つ女を見る目は、明らかに狂ってた。

でも、それをすべて夢で片付けた女にもゾッとする。

あのグリフィスの想いをこの女は無に出来たんだ。
俺だったら、絶対に出来ない。


「あんたは、これからどうするんだ?」
『私は…、』
「……俺と来るか?」


ただ、憐れだった。
こんな森の奥でひっそりと暮らそうとするこの女が。
この世界を知らない女が。

女は俺の言葉に、泣きそうな顔で笑う。


『ごめんなさい。私は、一人でここにいます。ガッツ様、ありがとうございました。』


緋の瞳を持つ綺麗な女は、ただただ憐れだった。





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