天女は恐れなければならない。(9/19)
「ハルミヤ、こいつがガッツだよ!」
「……」
『はじめまして、ガッツ様。ハルミヤと申します。』
ガッツ様がこの鷹の団に入られてから、彼は以前より明るくなった気がします。
私への、狂った愛はあまり変わりませんが、ガッツ様とキャスカ様と私が話すことは黙認するようになりました。むしろ、私とガッツ様が話すことを勧めているようにも見えました。
それが、少しだけ嬉しいです。
ある日のことでした。
ガッツ様と二人きりで、彼を待っていました。
「なぁ、あんたなんで歩けないんだ?」
二人きりの沈黙に堪えられなくなったのか、彼が聞いてきた言葉に、言ってもいいものか、と悩みながら、口を開く。
『……彼に、聞いたのですね。私の、足の腱は彼が斬りました。』
「は?グリフィスがか?」
私の言葉に驚かれたのでしょう。
ガッツ様は目を丸くし、あり得ないとでも言いそうな顔で私を見ます。
実際、キャスカ様以外の鷹の団の方々は私と彼の本当の関係を知らないと思います。私が、人前に出ることはありませんし、彼は人一倍、猫を被ることが得意ですから。
『本当ですよ。ですが、彼が持ってくる痛み止めの薬などの力を最大限に引き出したので、もうすぐ私は歩けると思いますよ。…彼には、秘密にしてくださいね。』
「いや、あんたって、結局グリフィスのなんだ?」
「ハルミヤは、オレの女だよ。」
突如聞こえてきたその声に、肩がびくんと揺れます。
どうしようどうしよう。
今の会話が彼に聞かれていたら。
私の足が治ってきていると、気付かれてしまったら。
私が、ここから逃げることは不可能となってしまう。
カタカタと震える身体を必死で抑え込もうと、腕を自分の身体に回す。
すると、お腹に彼の腕が回された。
「ハルミヤはオレの女。いくらガッツでも、オレのハルミヤを奪うのは赦さないよ。」
「…誰が取るか。趣味じゃねぇよ。」
「そう?よかった。オレも、ガッツを殺したくはないからね。」
そう言って、口だけで笑みを作る彼に、私は震えることしかできなかった。
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