狂った愛を捧げる男(7/19)
彼は、血だらけの私の足首を満足そうに見ていました。そして、血だらけなそこに口付けを落としたあと、彼は手際よく治療した。
痛みからか、恐ろしさから、それともその両方からか。私の身体は震えが止まりません。
「痛かったのか?」
『ひ…ぅ…っ、』
「オレはお前を離さないよ。その為なら、なんだってする。ハルミヤの心さえあればいいんだ。」
『ぃ、や…』
彼が言おうとしていることがわかりました。
彼は私の頬に刀の切っ先をあてがう。
恐らく私がこの先逃げ出すのなら、彼は容赦無く私の顔をボロボロにし、人を寄せ付けないようにするのでしょう。必要とあらば、私の手を足を切り落とすこともするのでしょう。
彼は、狂っています。
私を見る彼の瞳は燃えるように激しく、殺気さえ漂う程。
『なんで…私なの、ですか…、』
放って置いて欲しかったのです。
私は、あのまま死んでしまっても後悔はありませんでした。巫女として、一族を護れなかった私に生きてる資格などないのです。
「オレが欲しいと思ったから。ハルミヤの魂がオレのモノなんだ。分かってるよな?」
狂気に駆られたその笑みは、ゾッとするほど綺麗な笑みでした。
ですが、その裏にあるものはやはり闇を沸騰させるような狂気なのです。
彼に縛られた私は、逃げることも死ぬことも許されません。
足首の痛みはすでに感じず、熱だけをジクジクと訴えていました。
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