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私たちが洗濯物を終えるころにはもう日が沈んでいた。
赤い真っ赤な夕日が視界に入る。
ふと、私より先に洗濯物を終わらしたきりちゃんを見る。
すると、きりちゃんは村の方を見つめていた。
『?きりちゃん、なんかあったの?早く戻らないと、母ちゃんたちが心配するよっ!』
「……雪兎、村、おかしくねぇか、?」
『へ?』
そう言われて、ジッと目を凝らして村を見る。
よく見ると、夕日の赤に交じって、どす黒い煙やすべてを壊しそうな緋が見えた。
それがなんなのか気付いた瞬間、持っていた洗濯物が私の手から離れて、重力に従い地面に落ちる。
『き、きりちゃ、』
「戦だ…、」
ボソリときりちゃんが呟く。
それを意味するのは、絶望で、
私ときりちゃんは、何も言わずに無我夢中で走った。
母ちゃんと父ちゃんが無事でいることを、ぐちゃぐちゃな頭で願った。
村に着くと、熱さに眩暈がした。それと何かが焼きただれた臭い。
私よりも先に着いたきりちゃんが何かを見てぼーっと立ち竦む。
『ハァハァ…!きり、ちゃん?なに、みて………!』
きりちゃんが見ていたのは血だらけな女将さん。
私たちにお団子を奢ってくれたりしてくれた優しかった女将さんは、何かに助けを求めるようにして、腕を天に伸ばして、死んでいた。
吐き気がする。
けど、私たちは行かなくちゃ。
「『父ちゃん!母ちゃん!』」
待っててね。
お願いだから、生きていて。
家に着いた瞬間に、私は愕然とする。
な、んで?
「母ちゃん!父ちゃん!」
なんで、母ちゃんと父ちゃんが血だらけなの?
なんで、家が燃えてるの?
「きり、丸………雪兎……………」
「母ちゃん!父ちゃんが!父ちゃんが!」
「………わかっ、て………る……父ちゃん、は……わたしを、かばったの」
『っ!母ちゃん!待って!私が今助けるからね!』
母ちゃんのお腹からは、いつかの私みたいに血がダラダラと出ていて、止まらない。
それを止めようと、力を使うために母ちゃんに手をかざす。
「きり丸、ゆきと、よぅく、聞きなさい………ゲホッ、」
「母ちゃん!もうしゃべらないで!」
『そうだよ!私が治すから!!』
死なないで、死なないで。
お願いだから、なんでもするから。
「聞きなさい!ゆきと、わたしは……助からない、わ………」
『いや!…………きり、まる?』
「わかった。」
母ちゃんにかざしていた手をきり丸が、掴む。
…………きり、丸?
どうして?掴んでたら、治療できないよ?
なんで?なんで?
「きり丸………ごめんなさいね………っ」
わたしは、しあわせ、だったのよ。かわいい子どもたちに、めぐまれて、やさしい夫にもめぐまれたわ…………。わたしが死んだら、あなたたちは、二人でいきるの。二人で助け合いなさい。きり丸………、あなたには辛い決断をさせたわね。ごめんなさいね………。これから、辛いかもしれないけど、頑張って。愛してるわ。ゆきと……、わたし、あなたとずっと一緒にいるって約束したのに守れなくてごめんなさいね………。でもね、わたしはいつまでもあなたを愛してるわ。忘れないで。わたしは二人に会えて本当にしあわせだったのよ………………。だから、あなた達もしあわせに………………………………
ポロリ、最期に涙を流すと母ちゃんは動かない。
「母ちゃん………っ!」
『わたしも!わたしたちもだよ!きりちゃんとわたしはね!しあわせなんだよ!母ちゃんと父ちゃんがいたおかげなの!』
「おれたち、母ちゃんと父ちゃんに贈り物しようと思ってたんだぜ!大好きだから!だから、」
し な な い で ?
かみさま、かみさま、
なぜ、父ちゃんと母ちゃんは死ななければ、ならなかったのですか?
私は、ただ家族4人でいればしあわせだったのに。
多くを望んではいません。
ですから、父ちゃんと母ちゃんを私達に返してください。
かみさま、かみさま、
私は、あなたが大嫌いです。