■ The story does not change.
だんだん身体が汚れていく気がする。
『死にたいな…』
静かな裏庭で本を読む。
タイトルは白雪姫。
私が幼い頃に憧れた物語は、いまだ色褪せることなく、私の心の中に根付いてる。
幼い頃、そう。あれは前世の子どもの頃だった気がする。
いつかは私の元に王子様が来て、魔女から、悪夢から、助けてくれる。
王子様が、樹さんであればいいと何度願ったんだろう。
ちがう。確かに樹さんは王子様だった。
私を、孤独から救ってくれた。
「白雪!!」
静かだった裏庭に人の声が響く。
『……辻宮。』
「おまっ、なにしとんじゃ!!」
『?なにが?』
「生徒会やめたってどういうことだよ!」
その言葉に薄く笑う。
生徒会、そんなの所詮は閑雅様に頼まれて入ったもの。どうだってよかった。
私には意味をなさないもの。
ただ、物語を壊してしまえば、樹さんが手に入るかな、って思っただけ。
それは、無理だったんだけど。
「っ、お前はそれでいいんか!」
『どうでも。』
「俺の、俺の気持ちはどうなるんじゃ…、」
『?気持ち?会長にでも言ってきたら?あぁ、それともまおら?相談乗ってあげてたんだから、早く言ってきたよ。』
「違う!!!!!!」
私の言葉に大きな声を張り上げた辻宮にびくりと身体を揺らす。
『なにが、違うの?』
「俺が、俺が好きなのは…、」
『…辻宮も、なの、?』
「は、?白雪…?」
聞きたくない。そんな顔を赤くして、
私を好きって言ってるようなものじゃない。
『なんで、なんで、あの人は変わらなかったのに、あんたたちだけ変わるのよ!!私は、あの人だけに、変わってほしかっただけなのに…!!嘘、嘘よ!あんたたちの想いなんて、あんたたちの気持ちなんて、ぜんぶ嘘!!』
赦さない、赦さない。
私が心から願ったあの人の愛は、私の識っている通り、彼女のもの。
だから、だから、一ノ宮も、辻宮も、潮も、閑雅様も、みんなみーんな、気持ちはあの物語と同じじゃないといけないの。
私なんかを、好きになっちゃいけないの。
ポロポロと涙を零しながら、唖然としている辻宮を置いて、私はその場から走り去った。